成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

【和訳あり】ジャズ歌詞解説 ~Misty~

今日の歌詞解説は Misty (ミスティ)です。

この曲の歌詞の著作権は消滅していて、自由に利用ができる状態になっています。

なので、翻訳にもトライしてみました。

解説のあとに全文の和訳を載せてありますので参考になさってくださいね。

 

この歌を取り上げるに当たって、あれこれ聴いてみたのですが、歌い手によって歌詞が微妙に違っていました。

ここではダイアン・リーヴスが歌っているものを採用して解説します。

(どの歌い手の歌詞も、歌全体の意味に大きな違いはありません。)

 

ではいきましょう。

 

【 Look at me 】

「私を見なさい」。

命令文です。

 

【 I'm as helpless as a kitten up a tree 】

「私は木に追い上げられた子猫と同じくらい無力です」。

helpless は「どうすることもできない、手も足も出ない、なすすべもない、無力な、たよりない・・・」

難しい単語ではありませんが、ピッタリくる日本語を探すのが逆に難しいです。

up a tree は「木に追い上げられて、進退きわまって、途方に暮れて」。

 

【 And I feel like I'm clinging to a cloud 】

「そして私は雲にしがみついているような感じがします」。

cling to ~ は「~にしがみつく、まとわりつく」。

 

【 I can't understand 】

「私は理解できない」。

理解できない内容は、おそらく「自分の置かれたこの状況」、「なぜこんな状況になっているのか」といったことだと思います。

この文は次の文と繋がっていているのだ、考えることも可能です。

そうすると、次の文が「理解できない内容」だということになりますが、何となく不自然に感じます。

独立した文だと捉える方がよいかな、という気がします。

 

【 I get misty holding your hand 】

「あなたの手を握りながら、私は misty になる」。

さて、単語 misty が出てきました。

辞書によると「霞の立ちこめた、霧状の、もやのような、うすぼんやりとした、不明瞭な、漠然とした、あいまいな、涙にかすんだ・・・」

さて、どおしましょ。

「目が涙でいっぱいになった状態」だと考えてしまえば、わかりやすいです。

でも、私はもう少し抽象的な意味に捉えたいなあ、と思うのです。

この歌は、曲が先に作られて歌詞はあとからつけられたのだそうです。

作曲者のエロール・ガーナーは、霧の中を飛ぶ飛行機の中でメロディを思いついたのだとか。

歌詞をつけたジョニー・バークがそのことを知っていたのかどうか、どういう意味合いで misty という言葉を使ったのか、それはわかりません。

でも、何だか「霧の中を飛ぶ飛行機」のイメージを大切にしたいなあ、と思うのです。

どう訳すかはあとで考えることにします。

holding your hand は「分詞構文」と呼ばれる形です。

分詞構文の表す意味は様々です。

時、原因・理由、付帯状況など。

どのように訳すかは、前後の文脈などから総合的に考える、ということになるでしょう。

・・・難しいですねえ。

 

【 Walk my way, and a thousand violins begin to play 】

「私の道を歩いてみて、そしたら何千ものバイオリンが鳴り始めるから」。

命令文+and の形で「~しなさい、そうすれば」という意味になることがありますが、ここはそれだと思います。

a thousand ~ は、単純に「1000の」というよりは、漠然と「何千の、多数の、たくさんの」という意味でしょう。

 

【 Or it could be the sound of your hello, that music I hear 】

「それともあなたの『ハロー』という声なのかしら、私の聴いているあの音楽は」。

it は「形式主語」と呼ばれるもの。

実質上の主語は that music I hear です。

助動詞 could には様々な意味がありますが、ここは「可能性」を表しているのかな、と思います。

「~でありうる、ひょっとしたら~だ、~かもしれない」といった意味になりますね。

 

【 I get misty the moment you're near 】

「あなたがそばにいる時、私は misty になる」。

主人公にはバイオリンの音が聞こえたり、人の声が音楽に聞こえたり、夢と現実の区別がつかないような気分になっているワケですね。

それを misty という単語で表しているのだと思うのです。

単純に涙で目が曇って misty な状態になっている、というのではなくて、霧の中にいるような、もやに包まれているような、そんな気分を表しているように思います。

 

【 You can say that you're leading me on 】

「あなたが私を誘っているのだと言える」。

you can say that ~ は「~と言える、~と言って間違いないだろう」といった意味です。

lead ~ on は「~を誘う」ですが、「~を誘い込む、だます」といった少々よくない意味もあるようです。

もしかしたら、ここでも悪い意味を含んで使われているのかもしれません。

 

【 But it's just what I want you to do 】

「でも、それは、まさに私があなたに望んでいることなのです」。

what I want you to do は「私があなたにやってもらいたいこと」です。

 

【 Don't you notice how hopelessly I'm lost 】

「私がどれだけ絶望的に迷ってしまっているか、あなたは気づかないの?」。

lost は「道に迷った、混乱した、わけがわからなくなった、自信を失った」。

hopelessly は「希望を失って、絶望して、どうしようもないほどに、ひどく」。

 

【 That's why I'm following you 】

「それが、私があなたについて行く理由です」。

why は関係副詞で、先行詞 the reason が省略されています。

「だからあなたについて行くのよ」ぐらいに訳す方がわかりやすいかも、ですね。

 

【 On my own should I wander through this wonderland alone 】

「私は自力で、独りで、この不思議の国を彷徨わなくてはならないのですか?」

これは疑問文だと思います。

should は「~すべき」という意味の助動詞です。

should I ~ で「私は~すべきですか?」ですが、ここでは「いや、それは無理です」という意味が隠れているのだと思います。

on my own は「ひとりで、自分で、独力で」。

wander は「歩きまわる、さまよう、放浪する」。

wonderland は「不思議の国、おとぎの国」。

 

【 Never knowing my right foot from my left, my hat from my globe 】

「右足と左足もわからないのに、帽子と手袋もわからないのに」。

これは独立した文ではありません。

前の文、または後の文と結びついて「分詞構文」の形になっていると考えられます。

前の文に結びついているのならば「何もわからない状態で、独りでさまよえっていうの?」となりますね。

後ろの文に結びついているのならば「何もわからなくなるほど愛しているの」ということになります。

私は前の文にくっついていると考えているのですが、確かなことは言えないです。

know はここでは「区別ができる、識別する、わかる」です。

前置詞 from が使われると「~と~を区別する」ということになります。

辞書に know right from wrong というわかりやすい例がありました。

「正しいことと間違ったことを区別する、見分ける」ですね。

 

【 I'm too misty and too much in love 】

「私はあまりにも misty で、そして愛し過ぎているの」。

 

最後まで misty の訳語が見つからないままでしたが・・・

以上を踏まえて和訳にトライしてみます。

 

私を見て

木の上で途方に暮れた子猫みたいに無力なの

雲にしがみついてるみたいな感じよ

何故なのかわからないわ

あなたの手を握りながら

私は霧の中にいるみたいなの

私の道を歩いてみて

何千ものバイオリンが鳴り始めるから

私に聞こえるあの音楽は もしかしたら

あなたのハローっていう声なのかしら

あなたがそばにいる時

私は霧に包まれたような気分なの

あなたが私を誘ってるのよね

でもそれは私が望んでいることなのよ

私はひどく道に迷ってしまってるの

わからないかしら?

だからあなたについて行くのよ

私はたったひとりで 自分の力で

この不思議の国をさまよわなくちゃならないの?

右足と左足もわからなくなってるのに

帽子と手袋の区別もできなくなってるのに

私は霧に包まれてしまってるの

とてもとても愛してしまってるのよ

 

いかがでしょう。

参考になりましたら幸いです。

/// Words by Johnny Burke///

 

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