成見和子のブログ

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佐原実波【ガクサン】

とても楽しい漫画を見つけて、既刊の単行本9巻を一気読みしました。

佐原実波「ガクサン」です。

ガクサンとは学習参考書のこと。

一言で言うと「参考書出版社の面々が奮闘する物語」なのです。

 

この作品が目にとまったのは、最近の私が「学習参考書」に興味があったから、だと思います。

学習まんが「日本の歴史」を読んで、そのあとも、あれこれと日本史の参考書を漁って読んでるところだったのです。

大人の学び直し、ってヤツですね。

その過程で「今の自分に必要なのは思いっきり初歩レベルのものである」とか「自分には図表よりも文章の方が理解しやすい」といったことに気がつきまして。

その気づきの過程そのものも面白くて。

で、この作品を見かけて「これは!」と感じた次第。

読んでみたら直感どおり、とてもとても好みの作品でした。

 

毎話必ず、参考書や勉強に関するあれこれが盛り込まれてます。

このスタイル、よしながふみの「きのう何食べた?」を思い起こさせます。

一話読み進むごとに、読者の中に新しいレシピや知識が増えていく。

話の本筋だけでも十分面白いのに加えて、楽しみが重層的に加わってる感じ。

お得感がスゴイです。

ま、学習参考書の世界に全く興味のない方には響かないかも、という気もしますが。

 

参考書オタク・福山のキャラクターは、「好きになれない」と感じる人もいるかも。

「お気立てに難がおあり」な人物。

入社してイキナリ先輩がこれだったら、私なら逃げ出すだろうなあ、です。

もちろん、私は既に還暦過ぎたおばちゃんですから、「入社してみたら先輩がこれ」という状況は考えられないのですけど。

でも、もしも実際にこんな状況だったら「ムリ!」だろうなあ、と。

だけど、この作品の中での福山に関しては、私はOK。

不思議と嫌悪感はないです。

なぜなんだろう、と考えてみました。

何といっても第一話の時点で、主人公の茅野うるしが彼を認めていること。

福山の他人に対する関わり方は、「理不尽なパワハラ・モラハラ」だと受け取られても仕方がないものです。

でも、今後、福山は変わっていくのだろうなあ、そこに茅野うるしの存在が大きく関わっていくのだろうなあ、という感じが最初から漂っているのですよねえ。

そして、読み進めると、うるしの他にも福山を認める人が次々と出てくる。

「きっと良い方へ展開して行くはず」という信頼で読み進めることができるのです。

あ、「読み進めるべきである」という意味ではないです。

こういう人物のこういう言動に「一発アウト!」と感じる人は、読むのをやめればよいと思います。

まさに参考書と一緒で、漫画にも「合う・合わない」があると思いますので。

 

福山に限らず、登場人物は「不完全な人物」だらけです。

それが、お互いの関わりの中で気づきを重ねて、少しずつ変化していきます。

その変化が、何とも愛おしくて。

中でも私が好きなのは、赤城みお。

彼氏の好みに合わせた髪型や服装で無理をしていて、その無理を受け入れてしまってたのだけど、変わりつつあります。

9巻の最後では本来の自分らしい雰囲気になっていて、「かんばれ~、みおちゃん!」とエールを送りたくなります。

これって、姪っ子を応援する伯母みたいなもの?

いや、孫娘を応援する祖母かも・・・。

そうそう、東大卒だけど精神年齢が中学生並みの宮下七海も注目。

こちらも変化の兆しあり。

これからどう変わっていくか、楽しみです。

 

10巻はいつ出るんだろう。

早く続きが読みたい!

 

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