よしながふみの漫画「大奥」。
めちゃくちゃ面白い、間違いなく名作だ、という噂はもちろん知ってました。
でも、なぜだか、ずっと手を出していなかったのですよねえ。
映画やテレビドラマも、どれも観ていなかったです。
なんとなく勝手に「ゲテモノ」扱いをしていたのでしょうねえ、私の中で。
だって、男女逆転、大奥が男だらけ、ですよ?
こわいものみたさで覗いてみる、となるのが普通だと思うのだけど、私は逆で。
アヤシイものには近づかない、という感じ。
実際に読んでみた感想は「なんで今まで読まなかったんだろう! 何という勿体ないことを!」でございました。
きっかけは、今年(2023年)のNHKドラマ。
徳川吉宗を富永愛さんが演じるというので、とっつきやすそう、ドロドロ感が薄いかも、と思って第一話を観てみたら、これが面白かった。
で、原作も読んでみようか、と思い立ったのです。
最初は、ドラマの進行に合わせて、少しずつ読み進めようと思っていたのですが・・・
出来ませんでした(笑)
こらえきれずに19巻全てを一気読み。
すさまじい充実感と満足感に浸ったのでした。
その後も、ドラマの進行に合わせてその部分を読み返してみるなど、繰り返し熟読。
いやいや、ホントに、傑作。
よくもここまで描けるものだなあ、と。
よしながふみさんって、本当に人間なのか?
どのエピソードも思いっきり濃くて。
あんなにたくさんの登場人物が、すべて魅力的で。
あ、魅力的とは言い難い人物もたくさん登場しますけど、それがまた魅力的で。
そんな中でも「どう考えればよいのかわからず困惑」な登場の仕方をしたのが、何といっても和宮です。
作中の登場人物たちにとっても困惑の極みでしたが、読んでいる方も「え? え?? えぇ~!!!」でした。
だって、読者としては、江戸時代の終わりが近いと知ってるのです。
それまでは、歴史上の事実をなぞりながらも縦横無尽に展開するよしながワールドに浸りきって楽しんでいればよかったのです。
でも、そろそろ風呂敷を畳まなければならない時期なワケで。
それなのに、やってきた和宮は何と、男ではなく女!
一体どうやってオトシマエをつけるのだ!
いやいや、これ、私も相当混乱してますよねえ。
まさに、よしながワールドに洗脳されちゃってました。
そして・・・
なんということでしょう!
物語は、歴史上の事実と見事に合流して着地してしまったのです!!
よくよく考えてみれば(よくよく考えてみなくても!)和宮は歴史上まぎれもなく女性なのですから。
やられました。
鮮やかに明治以降の歴史に繋がってしまったのです。
天才だわ、よしなが先生。
天璋院の写真のエピソードも大好きです。
あの写真はどこで見たのだったか。
日本史の教科書か副読本か?
日本史に詳しくない私でも見覚えのあるあの写真、あれが見事な小道具として使われていて、まさに「舌を巻く」という感じ。
あっぱれ、でございます。
ドラマの方は先週終わってしまって名残惜しいです。
岸井ゆきのさんの和宮が素晴らしかった。
原作未読でドラマを観た人たちも、十分すぎるほど楽しめたに違いないけれども。
それでも。
やっぱり。
「原作も読んでみてーっ!!!」なのです。