成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

海野つなみ【逃げるは恥だが役に立つ】

海野つなみの漫画「逃げるは恥だが役に立つ」、初めて読みました。

2016年にテレビドラマ化されましたよね。

とても楽しく視聴したのを覚えてます。

魅力的な俳優さんがいっぱい出てて、毎週楽しみで、待ち遠しくて。

今回ふと思い立って原作を読んでみたのですけど、原作も良かったです、やっぱり。

テレビドラマよりも硬派な感じで、単なる「ラブコメ」ではなかったです。

主人公の森山みくりが置かれた状況がハードで。

そのあたり、ドラマでは、みくり役の新垣結衣さんがあまりにも可愛らしかったためか、あまり前面に出ていなかったように記憶しています。

 

どうハードなのかというと、「高学歴女子の貧困」へまっしぐら、という感じなのです。

院卒でも就職できず、派遣の仕事をしていたけれど派遣切りにあってしまう。

家事代行の仕事を始めたものの、もちろんそれだけでは食べて行けない。

そこへ両親が、「定年後は田舎暮らしをするが一緒に来るか?」と。

これ、とても恐ろしい分かれ道だったと思うのですよねえ。

もしもここで一緒に行っていればどうなったか。

田舎でももちろん職は見つからず、とりあえずアルバイトで少しだけ稼ぎつつ親の家で暮らす。

そうこうするうちに親の介護が必要になったりして。

親の年金で暮らしているうちに本人も年齢を重ねて、ますます就職は遠のく。

そのうち親が亡くなって年金が入らなくなって・・・。

まさに「詰む」ってヤツですね。

 

歯の治療のエピソードも興味深いです。

保険診療で済ますか、自由診療のものにするか。

ここで悩むことになるのは、みくりに貯蓄がないから。

何かあったときの備え、余裕がない。

選択肢が狭まる、ってこと。

この場面では、見た目を気にしての自由診療希望、つまりは「贅沢」ってことなので、まあいいのだけど。

収入が少なくて蓄えがなかったら、通常の医療費だってケチることになります。

結果、対応が遅れて、身体を悪くして、それが理由でまた就職が難しくなったりして。

まさに負のスパイラルです。

 

で、この作品が何なのかというと、「森山みくりが貧困に陥らずにサバイバルして、良き伴侶と正社員の座を手に入れる」というお話なのだ、と私は考えてます。

「良き伴侶を手に入れる」の部分がラブコメっぽくて楽しいためか、その他の部分を読み飛ばしてしまう方が多いような気がして、それは勿体ないなあ、と思うのです。

 

登場人物のセリフや心の中の声が、とても濃いです。

一緒になって考えさせられる部分が多くて。

必ずしも漫画じゃなくても、小説としても成立するのでは? という感じです。

機会があったら、ぜひじっくりと読んでみてくださいませ。