芦原妃名子さんが亡くなったというニュースに心がざわついてしまいました。
しばらくは仕事が手につかないほどでした。
芦原さんの作品は読んだことがなく、ドラマも視聴していないにも関わらず。
以前から「原作とドラマ化・映画化」について、いろいろと考えることが多かったからだと思います。
SNS上では、いろいろな人が、いろいろな発言をされていました。
もちろん私は、そこへ参戦する気はありません。
でも、どうにも落ち着かないので、何はともあれ、問題の「セクシー田中さん」を読んでみました。
驚きました。
とてもとても、良い作品です。
これまで知らずにいて、本当に勿体ないことをしていたのだなあ・・・。
私は1日にして、この作品のファンとなったのでした。
結果、もとからの熱心な読者の方々の気持ちを追体験することに。
それは、ドラマ化に対しての不安と危惧でした。
この作品の世界観は維持されるのだろうか?
全くの別モノになってしまうのではないか?
登場人物たちの繊細な心の動きが切り捨てられて、わかりやすいコメディに仕立てられてしまうのではないか?
何よりも問題なのは、原作が完結していない、ということ。
芦原先生が考えているのとは異なる展開になってしまうのではないか?
芦原先生以外の人の手による結末を、原作の完結よりも前に見せられてしまうのではないか?
この後どう展開するのか、どんな結末に行き着くのか、あるいはどこにも行き着かないのか、読者は「芦原先生自身の手で見せて欲しい」のです。
これが、完結した作品であれば、それほどまでに神経質にはならないのかも。
「やっぱり原作のほうがいいよねえ」とか「いや、ドラマも案外よかったと思う」などと、それなりに盛り上がるのかもしれないのだけど。
「原作とドラマ・映画は別モノだからねえ」という余裕の気分になれるかもしれないのだけど。
こういうファンの心理を、芦原さんは十分に理解しておられたのだと思います。
それに対する答えが、単行本の第7巻の冒頭に掲載されていました。
誠実な言葉が連ねられていました。
いろいろと苦労されている様子がにじみ出ている文章です。
読者のことを本当に大切にされていたのだなあ、と感じます。
だったら、そもそもドラマ化を承諾しなければいいのでは? とも言えますが、そこは何かしら断り切れないものがあったのだろうなあ、と。
で、読者を裏切らないよう、最善の方法を探って努力を重ねられたのだろうなあ、と。
芦原さんにとっていちばん大切なのは、これまでずっと読み続けてくれた読者の人たちだったのだろうなあ、と思うのです。
芦原さんが亡くなられたことで、私たちはこの物語の続きを読むことができなくなりました。
すさまじい損失です。
それを考えると、凶暴な気分になります。
犯人をあぶり出せ、復讐してやる、などと。
もちろん行動に移すことはありませんが、こういう気持ちになるのを否定することもできません。
まだまだ、心のざわつきは続きそうです。
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