成見和子のブログ

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舟を編む(映画・2013年)【ネタバレ注意】

「舟を編む」を観ましたので感想などをメモしておきます。

 

15年!

そして、それで終わりじゃなくて、果てしない改訂作業が日々続いていく・・・。

何という壮大なプロジェクトなんだろう。

そして、何という地道な作業の積み重ねなんだろう。

 

自分の知らない世界を覗いてみるのは楽しい。

それだけでも、この映画には価値がある。

ドキュメンタリーではなくて、原作小説に基づく物語なのだから、辞書編集の現場そのものではない部分もあるのだろうな、とは思うけれど。

それでも、文句なしに楽しいです。

 

あ、私、大学では言語学専攻でした。

馬締光也ほどの勉強家ではなかったけど(笑)

もしも私が出版社に就職して営業部に配属されたとしたら、馬締みたいに「全く使えないヤツ」になっただろうなあ。

だからといって、辞書編集部に移ったとしても、やっぱり使えなかっただろうなあ、と思う。

最初はやる気出すかも知れないけど、すぐにイヤになるだろうなあ。

馬締の情熱と執念の持続はスゴイ。

ひたすらスゴイ・・・。

彼はきっと、一生を辞書編集に捧げるんだろうなあ。

 

いや、ちょっと待て。

彼がその天職を中断することはあり得る。

妻のためになら。

 

この物語の重要なポイントは「伴侶」にあると思うのです。

4組の夫婦が登場します。

馬締と西岡それぞれの恋模様は、絶妙に絡み合いながらコミカルに展開し、結局二人とも良き伴侶を得ることになります。

時が流れた後、松本の老妻も登場し、この夫婦の良き関係も描写されます。

これらをじっくりと見せられた後に、冒頭の場面を思い返すと、「ああ、なるほど、そうだよねえ」と得心がいくのです。

荒木の妻は直接は登場しないけれど、この人もきっと良き伴侶だったのだろうなあ、と感じられるのですよねえ。

辞書編集ひとすじの仕事人生を丸ごと受け入れて、理解し、応援した人だったのだろうなあ、と。

香具矢みたいな人だったのかもしれない。

松本の妻のような人だったかもしれない。

病気の妻の介護のために定年きっかりで辞める、という荒木の態度は、最初に見た時は「これほどまでに求められて、頼られているのに、無責任ではないか?」と思ってしまったのだけれど。

でも、最後まで観てから振り返ってみると、共感・納得してしまいます。

香具矢が病気になったとしたら、馬締も同じ行動を取るかもしれないなあ、という気がするのです。

 

ところで。

この作品で私が大好きなのは、何といっても「早雲荘」のたたずまい。

外観も、内部の様子も大好き!

この建物自体が、主人公たちの人生を見守っているような気さえするのです。

 

用例を集める方法など、2023年の現在ではいろいろと変化しているのだろうなあ、と思います。

それでも辞書編集の基本は変わっていないのでは? という気もします。

2013年の映画ですが、今観ても十分に面白いです。

おすすめです。

 

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