「舟を編む」を観ましたので感想などをメモしておきます。
15年!
そして、それで終わりじゃなくて、果てしない改訂作業が日々続いていく・・・。
何という壮大なプロジェクトなんだろう。
そして、何という地道な作業の積み重ねなんだろう。
自分の知らない世界を覗いてみるのは楽しい。
それだけでも、この映画には価値がある。
ドキュメンタリーではなくて、原作小説に基づく物語なのだから、辞書編集の現場そのものではない部分もあるのだろうな、とは思うけれど。
それでも、文句なしに楽しいです。
あ、私、大学では言語学専攻でした。
馬締光也ほどの勉強家ではなかったけど(笑)
もしも私が出版社に就職して営業部に配属されたとしたら、馬締みたいに「全く使えないヤツ」になっただろうなあ。
だからといって、辞書編集部に移ったとしても、やっぱり使えなかっただろうなあ、と思う。
最初はやる気出すかも知れないけど、すぐにイヤになるだろうなあ。
馬締の情熱と執念の持続はスゴイ。
ひたすらスゴイ・・・。
彼はきっと、一生を辞書編集に捧げるんだろうなあ。
いや、ちょっと待て。
彼がその天職を中断することはあり得る。
妻のためになら。
この物語の重要なポイントは「伴侶」にあると思うのです。
4組の夫婦が登場します。
馬締と西岡それぞれの恋模様は、絶妙に絡み合いながらコミカルに展開し、結局二人とも良き伴侶を得ることになります。
時が流れた後、松本の老妻も登場し、この夫婦の良き関係も描写されます。
これらをじっくりと見せられた後に、冒頭の場面を思い返すと、「ああ、なるほど、そうだよねえ」と得心がいくのです。
荒木の妻は直接は登場しないけれど、この人もきっと良き伴侶だったのだろうなあ、と感じられるのですよねえ。
辞書編集ひとすじの仕事人生を丸ごと受け入れて、理解し、応援した人だったのだろうなあ、と。
香具矢みたいな人だったのかもしれない。
松本の妻のような人だったかもしれない。
病気の妻の介護のために定年きっかりで辞める、という荒木の態度は、最初に見た時は「これほどまでに求められて、頼られているのに、無責任ではないか?」と思ってしまったのだけれど。
でも、最後まで観てから振り返ってみると、共感・納得してしまいます。
香具矢が病気になったとしたら、馬締も同じ行動を取るかもしれないなあ、という気がするのです。
ところで。
この作品で私が大好きなのは、何といっても「早雲荘」のたたずまい。
外観も、内部の様子も大好き!
この建物自体が、主人公たちの人生を見守っているような気さえするのです。
用例を集める方法など、2023年の現在ではいろいろと変化しているのだろうなあ、と思います。
それでも辞書編集の基本は変わっていないのでは? という気もします。
2013年の映画ですが、今観ても十分に面白いです。
おすすめです。
★こちらの記事もどうぞ