成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

しゃべれども しゃべれども【ネタバレ注意】

「しゃべれども しゃべれども」を観ましたので感想などをメモしておきます。

 

最初から最後まで、たっぷりと楽しみました。

何だか「落語界の大名人の若かりし頃のエピソード」を見せていただいたような気分。

もちろん、三つ葉がこのあとさらに上手くなるのか、真打になれるのか、それはわからないのですけど。

でもでも、ついつい妄想してしまうのです。

三つ葉が真打になって、本物の弟子を取るようになって、あの外山家が賑わっている様子を。

五月さんがおかみさんになってて。

村林が本当に弟子になるかどうかはわからないけど。

 

何故そんな気分になるのかなあ。

ひとつには、この映画の空気感みたいなものかも。

浅草の街や寄席の雰囲気。

師匠の家や外山家の様子。

都電の往来。

時間は「今」のはずなのに、「ずいぶん前のこと」だと思わせるような空気があるのです。

だから、「今昔亭三つ葉の若い頃のお話」のような気がしてくるのですねえ。

 

三つ葉が「火焔太鼓」を自分のものにしたい、と強烈に願うシーンが印象的。

普通の状態じゃないのですよね。

失恋で精神はズタズタ。

おまけに食あたりで身体もボロボロ。

少々おかしくなっているからこそ「これだ!」と反応したんじゃないか、そんな気がするのです。

普通の状態だったら出会えなかった、そんな気がするのです、何となく。

 

そこからの猛練習は本物、真面目そのもの。

「出会い」が運命だったとしても、稽古を積まなければ結果は出ないのだから当然だけれど。

結果が出なければ、よい出会いもなかったのと同じこと。

でも、仕上がりは芳しくなくて。

ああ、これはダメなのかな、と。

 

それが、なんと、本番で三つ葉は化けるのです!

これも、不思議だけれど、わかる気がするのですよねえ。

「生命が宿った」とでもいうのかなあ。

五月や村林、湯河原とのドタバタやゴタゴタが、三つ葉の「火焔太鼓」に「日々を生きる人間の息を吹き込んだ」感じ。

 

五月さんは「ヤヤコシイ女」です。

最近は「こじらせてる」と表現するのでしたっけ?

還暦過ぎた現在の私から見ると、「おいおい」と思うようなところもある。

でも・・・私も若い頃、ああいう態度を取ったこともあったような・・・。

最後はとびっきりの笑顔でした。

女優さんがキレイすぎるので、一見「あり得ない出会い」みたいに思えるのだけど、三つ葉とは「生活圏を同じくするご近所さん」なのですよねえ。

実は「日常の、ありふれた出会い」なのだと言えそう。

「都電の停留所の真ん前にあるクリーニング屋さん」という設定も良いですねえ。

 

湯河原さんのことは「いつ化ける? どう化ける?」とワクワクしながら見ていたのだけど、化けなかったですね(笑)。

でも、新しい道を見つけました。

村林に野球を教えたことがきっかけになったのですねえ・・・。

じわっ、と沁みます。

 

村林優を演じた子役さんにはビックリでした。

いやいや、すごい、落語のシーンが上手すぎる・・・。

森永悠希さん、1996年生まれで、現在27歳だそうです。

今はどんな活躍をされているのか、気になります。

 

何はともあれ、寄席に行ってみたくなりました!

 

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