成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

成年後見制度を利用している方の給付金申請と郵便物転送のお話。

私は法律系の専門職で、いろんな方の成年後見人や保佐人として活動してます。

そんな中で「ん?」と思ったことがあったので、書き留めておこうかと。

 

★事例は、実際の案件そのものではなく、個人が特定できないようにアレンジしてあります。

 

少し前から、各自治体で「価格高騰重点支援給付金」の支給が始まっています。

私が保佐人になっているAさんは、この給付金の対象です。

 

「保佐」というのは成年後見制度の一つの類型です。

「成年後見」に比べると、サポートを受ける範囲が狭いところが特徴。

逆に言えば、ご本人が自分で出来ることも多い、ということ。

Aさんは認知症ですが、東京都内某区のアパートで一人暮らしをされています。

ヘルパーさんの訪問を受けたり、デイサービスに通ったりしながら、何とか生活しています。

ちょっと面倒な事務処理はご自身では難しく、保佐人である私が代理して行っています。

 

というワケで、今回の給付金の申請も私が行うことにしたのですが、問題がありました。

申請に必要な「確認書」がAさんのところへ届いてしまうのです。

介護保険や後期高齢者医療については、個別に保佐人の届出をしていて、Aさん関係の書類は私のところへ届きます。

でも、今回のような給付金については、そういった届出の制度がなく、一律に「住民票上の住所」へ書類が送られてくるのです。

私は定期的にAさんの自宅を訪問しているので、その際に「区役所からこんな書類が来てませんか?」と尋ねたのですが・・・

Aさん「う~ん・・・・」。

年々記憶障害が進行していて、覚えておられません。

一緒に部屋の中を探してみたものの、見つからず。

 

という次第で、給付金専用のコールセンターへ電話。

「Aさんの確認書の再発行をお願いします。ご本人はすぐに書類を紛失してしまうので、保佐人である私の方へ送っていただきたいのですが」。

私には「臨時給付金その他の公的給付の受領及びこれに関する諸手続」の代理権が付与されていますから、当然受け付けてもらえると思ったのに、「NO」と言われてしまいました。

 

う~ん、なぜ?

いろいろと聞いてみた結果、「保佐人が今回の給付金の申請手続きをすることはできるが、書類は本人あてにしか送れない」とのこと。

う~ん、納得いかないぞ?

「書類は住民票上の住所あてに送ります。そういう決まりになってます。必要でしたら郵便局に転居届を出して、保佐人さんのところへ転送してもらってください」だと。

いやいや、ちょっと待て。

保佐人のところへ郵便物の転送って、それはNGだぞ。

 

あ、ここで解説です。

郵便局がやってる「転送サービス」は「ご本人が実際にいる場所」あてにしかできません。

「居住の実態」で考える、ということなのです。

(だから「転送届」ではなくて「転居届」なのだと思います。)

例えば一人暮らしの人が入院した場合、本人のいる病院あてに転送することはOKだけど、親戚や知人に転送して代わりに受け取ってもらうのはNGなのです。

認知症の高齢者が老人ホームに入所した場合、老人ホームに郵便物を転送することはOKだけど、保佐人のところへ転送することはNG。

もしもこれが認められたら、それこそ年賀状なんかも含めて全部が保佐人のところへ転送されてしまいます。

とんでもない越権行為になってしまうのです。

だからこそ、後見人や保佐人は区役所の介護保険課やら後期高齢者医療の担当課などを回って、個別に届出を行って、書類を直接送付してもらうようにしているのです。

 

私はコールセンターの人に「保佐人のところへの郵便物転送は不可である」ことを説明しようとしたのですが、聞く耳持たず、という感じで相手にしてもらえません。

しまいには、何だか自分が「不当な要求をする悪質クレーマー」みたいな気がして来て・・・

それならそれでいい、言いたいこと言ってやれ、と思って「つまり、認知症で書類を失くす方は、事実上、今回の給付金は受け取れないということですね。○○区では、それは仕方のないことだ、とお考えなのですね」と言って電話を切ろうとしたら、さすがに慌てたようで。

「ちょっと確認してきます」と。

で、しばらくして「保佐人さんが直接窓口に来ていただければ手続きできます」だと。

あ、そうなの?

だったら最初からそう言ってくれればいいのに。

いや、何か私の説明の仕方がマズかったのかな?

「書類を保佐人へ送って欲しい」ではなくて「保佐人が申請をするにはどうすればいいのですか?」と聞けばよかったのかな。

ま、いいや。

 

で、後日区役所へ。

給付金相談の臨時窓口が設けられていて、特に問題なく申請は完了。

めでたしめでたし・・・じゃなくて。

 

窓口の人「これで手続きは完了です。1か月ほどで振り込まれます。振込のお知らせはご本人あてにハガキが・・・」

私「あ、私あてに送っていただくことはできませんか? 申請したのは私ですし、ご本人は何のことかわからず混乱されると思いますので。」

窓口の人「お知らせは住民票上の住所に送る決まりになってまして。必要でしたら郵便局に転居届を出していただいて・・・」

私「(・・・もういいや、めんどくさい)、わかりました、ありがとうございましたっ!!」

 

なんだか物凄く疲れたのでした。

 

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