成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。法律用語解説も始めました。

やさしい法律用語解説【祭祀財産】

今日の法律用語解説は「祭祀財産」です。

早速いきましょう。

 

祭祀財産とは、家系図、祭具(位牌、仏壇など)及び墓地(墓碑を含む)のように、祖先の祭りのために使用される用具のことです。

 

以上。

 

いやいや、以上って(笑)。

でも、言葉の意味としては、これ以上のことはないのです。

 

じゃあなぜこの言葉を取り上げたのか。

この言葉がなぜ法律用語辞典に載っているのか。

 

それは、法律上「祭祀財産」として一括りにする意味があるから、です。

「相続財産」と切り離す必要があるのです。

 

ちょっと我慢して条文におつきあいください。

 

民法897条です。

 

(祭祀に関する権利の承継)

第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、・・・

 

「前条の規定にかかわらず」にご注目。

前条に何かしら規定があって、「でも、祭祀財産については前条の規定ではなく、この897条の規定によって処理する」ってことです。

 

では「前条」、つまり民法896条を見てみましょう。

 

相続の一般的効力)

第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、・・・

 

相続についての規定ですね。

 

つまり、896条で「相続」について規定しておいて、次の897条で「祭祀財産については相続財産とは別の扱いをする」と言っているのです。

 

このふたつの条文を知っているだけで、世の中にあふれている疑問の多くが解決してしまいます。

 

「お墓は相続財産なの?」

→「違います。」

 

「相続放棄したらお墓は継げないの?」

→「いいえ。承継できます。」

 

「お墓を継ぎたくないので相続放棄したいのですが」

→「相続と祭祀承継は別ものです。相続放棄したからお墓は継がなくてよい、ということにはなりません。」

 

「実家の土地建物を相続した人が仏壇も引き受けるべきですよね」

→「相続と祭祀承継は別ものです。切り離して考えてください。」

 

・・・こんな具合です。

 

さて。

めざとい方は、民法897条の中に「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者」という言葉を見つけて、「長男ですよね? 長男が承継すべき、ってことですよね?」と思われたかもしれません。

これに対する答えは「そうとは限らない」です。

 

改めて、民法897条の全文を見てみましょう。

 

(祭祀に関する権利の承継)

第897条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

 

簡単にまとめると、祭祀の承継者は次の順序で決定する、ということになります。

①被相続人の指定があれば、それに従う

②指定がない場合は、話し合いによる

③話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所へ持ち込む

 

え? ②は話し合いなの? 「慣習」じゃないの? と思われた方も多いでしょう。

でも、2025年の現在、「共通認識として確立された慣習」なんてものは存在しない、と言ってよいでしょう。

なので、事実上「話し合い」ということになると思います。

意見が割れて決着がつかない時は、最終的には裁判所が指定することになりますが、どんな結果になるかは「それぞれのケースによる」としかいえず、予測することは困難です。

 

以上、今日の法律用語解説は「祭祀財産」でした。

参考になりましたら幸いです。

 

★こちらの記事もどうぞ