今日の法律用語解説は「寄与分」です。
早速いきましょう。
寄与分とは、「相続財産の維持または増加に特別の寄与をした者がいる場合に、その寄与を金額で評価したもの」です。
相続分の修正に使われます。
共同相続人のうちの誰かが被相続人の生前に特別の寄与をして、その結果、相続財産が維持されたり増えたりした場合、何の配慮もなしに指定相続分や法定相続分で遺産を分けるのは公平とは言えませんよね。
そんな場合に、修正が行われるのです。
たとえば、ある相続人の寄与分が「200万円」だった場合、まずは遺産の総額から200万円を取りのけて、残りの金額で各自の相続分を計算します。
取りのけておいた200万円は、寄与した相続人の相続分に加えることになります。
ここまで読んで、「介護をしたから多めに遺産がもらえるはず!」とお考えの方は「あれ?」と思われたかもしれませんね。
「特別の寄与」とか「財産の維持または増加」とか。
「介護」がこれに該当するのは結構難しいのでは、と感じられたかもしれません。
実際そのとおりなのです。
この感覚のズレが、あちこちで紛争を引き起こしているように思います。
条文を確認してみましょう。
民法904条の2です。
(寄与分)
第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
(第2項以下省略)
寄与の方法として「療養看護」も例示されていますから、介護が対象になり得ることは確かです。
でも、「特別の寄与」とハッキリ書かれていますよね。
そもそも親族間には扶助や扶養の義務がありますから、その範囲内であれば「特別」ではない、ということでしょう。
(親族であれば必ず扶助や扶養の義務がある、というワケではありません。一定の場合には、ということです。民法730条、752条、877条1項に扶助や扶養の規定がありますので、気になる方はご確認を。)
「財産の維持または増加について」もハッキリ書かれていますね。
「介護を担った結果、ヘルパーさんに支払う費用が浮いた」なら対象になり得ますが、「寄り添って精神的な支えになった」は対象にはならない、ということです。
でも、ほとんどの人は法的思考で動いているワケじゃありません。
「お金に換算できない貢献」に対する評価や感謝を求めたくなります。
その気持ちが満たされないことが、相続争いがこじれる要因になることも多いようです。
「お金に換算」が肥大化しているケースも見かけます。
「自分は介護のために仕事をやめた。もしもやめていなかったら年収〇〇万円だったはず。その埋め合わせがなされるべき」という発想で取り分を主張する、とか。
この考え方だと、民法が想定している「寄与分」とはかけ離れた金額になってしまいます。
主張された側は「何バカなことを言ってるんだ!」となって、争いに突入。
そして「あなたは何もしなかったくせに!」という感情論になって、永遠のループ・・・
介護の場合だけでなく「家業を手伝った」という場合にも、同様の問題が起きがちです。
紛争を避けるには、法律を理解しておくことが大切です。
自分が漠然と「この程度はもらえるはず」とイメージしているものが、法律上認められるものなのかどうか、あらかじめ知っておくことが役に立つと思います。
以上、今日の法律用語解説は「寄与分」でした。
参考になりましたら幸いです。
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