成見和子のブログ

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こうの史代【ギガタウン漫符図譜】

こうの史代「ギガタウン漫符図譜」を読みましたので、感想などをメモしておきます。

ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。

 

タイトルからは、一体どんな内容なのか全くわからないですよねえ。

「ギガタウン」って?

実はこれ、有名な「鳥獣戯画」から来てるんです。

鳥獣戯画の登場人物(動物)たちが現代に甦って大活躍。

彼らが暮らす街が「ギガタウン」なのでございます。

あ、大活躍といっても、メインのキャラクターたちは小学生という設定なので、可愛らしい活躍ぶりです。

というか、描かれるのは「日常」です。

でも、子供たちにとっては、日常がそのまま冒険ですものね。

それから、「現代」といっても、「鳥獣戯画が描かれたとされる12~13世紀から見れば現代」ということ。

時代は昭和だろうなあ、という雰囲気が漂ってます。

 

4コマ漫画集です。

2018年に単行本として出版されましたが、もともとは「一冊の本」という雑誌に連載されていたとのこと。

連載は2015年から2017年にかけて。

平成の終わり頃ですねえ。

それなのに時代の設定が昭和っぽいのは、こうの史代さんが1968年生まれだからかなあ、と思います。

ご自身の小学生時代のことを思い出しながら描かれたのだろうなあ、と。

 

ウサギのみみちゃん、カエルのあおい君、サルのきい子ちゃん、そして家族や先生や街の人たちが繰り広げる毎日のあれこれ。

それだけでも楽しいのに、加えてスゴイ仕掛けが。

それぞれのお話が同時に「漫符図譜」になっているのです。

漫符の図解・解説ってこと。

「漫符」という言葉は初めて知りました。

実物はイヤというほど見てきたけれど。

子供の頃から漫画に接して来て、アタリマエのように馴染んでいたアレら。

アレらには「漫符」という名前があったのですねえ。

 

実は漫画の世界にはたくさんの約束事があるのだと、改めて認識させられました。

知らない間に学習して身についてしまったアタリマエの表現。

それを読み取ることは、私には容易です。

解釈を誤ることはほとんどありません。

でも「知らない人にはわからない」という性格のものだったのですねえ、実は。

たまに「漫画が苦手」という人に遭遇すると「?????」だったのですが、理由の一端が理解できた気がします。

 

漫画の中でスズメが飛んで「チュンチュン」「チチチ」と書いてあると「場面は朝なのだな」と瞬時に理解します(私は)。

スズメが描かれていなくても、「チュンチュン」「チチチ」だけであっても理解できます。

でも私は「スズメは朝によく鳴く」のかどうか考えたこともありません。

事実はどうなのか、調べたこともありません。

実際の生活の中で「朝はスズメがよく鳴くなあ」と感じたこともないように思います。

では、何故「チュンチュン」「チチチ」で朝だとわかるのか。

それは「漫画の世界では定着した表現であり、それを私は知っているから」なのですよねえ。

あ、この問題は深掘りするとキリがないので、この辺にしておきましょう。

 

ともかく、お勧めの一冊です。

 

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