「50回目のファーストキス」を観ましたので感想などをメモしておきます。
楽しいコメディとしてスタートします。
深く考えずに観てればOK、という世界。
それが、あれ?という展開になり・・・。
恐ろしく困難な状況であることが判明。
うわあ、これ、どうなるの?
心して、最後まで見届けなければ、という気持ちになります。
瑠衣の父と弟が毎日演出する仕掛けがスゴイ。
笑いを交えながらも、二人の献身ぶりに涙が出そうになります。
同時に、強烈な違和感も。
一見美談だけれど、このままでいいハズがない!
そして、この状況を大輔が動かすことになります。
前に進み始めるのです。
ここ、すごく重要だよなあ、と思います。
家族の愛は尊いけれど、それは閉じられた世界。
そこへ外部からやって来た者が穴を開けようとする。
家族はもちろん抵抗するけれど、結局受け入れることになります。
実は「このままじゃいけない」という思いもあったのでしょう。
でも、やっぱり、大輔の瑠衣への思いを信じた、というのが大きいだろうなあ。
状況は動き出し、素敵な時間が重ねられて行くのだけれど・・・
それは終わりへの始まりでもありました。
瑠衣は自分が置かれた状況への理解を深めながら前進していきます。
そんな中での彼女の自己決定は、きちんとした根拠のある確固としたもの。
だからこそ、彼女の「別れる」という意思を、大輔は否定することができなかったのだろうなあ、と思います。
そのまま二人は別の道を行く、という結末もアリだよね、という気がします。
病院での瑠衣の生活は穏やかで充実してる。
父と弟の庇護から抜けて自分で生きてる。
そして、アトリエには何故か同じ男性の絵がたくさん。
・・・これでも十分にいいストーリーだと思うのです。
けれど、この映画は、そうはしなかった。
新たな展開へとつながる大輔の言葉が好きです。
「なんで別れなきゃいけねえんだ」。
瑠衣の意思を尊重して別れを受け入れた時、大輔は自分の意思を殺していました。
それが今、湧き上がって来たのですねえ。
瑠衣の気持ちがどうであれ、客観的な状況がどうであれ、自分は瑠衣と一緒にいたい。
単純明快です。
ハンディキャップのある者への配慮だとか責任感だとか、そういった雑音なしの本音、ってことですよねえ。
これは強いです。
そこから先の展開については、「こんなこと本当にあり得る?」という面は、確かにあります。
でも、大輔の「本気で望むことに対しては凄まじい努力をする」というキャラクターがきちんと描かれているので、違和感が少ないです。
そして瑠衣の知性と感性も、凡人のものではありません。
この二人の出会いは、やっぱり「映画の中でしか起きない奇跡」だと思います。
なので、瑠衣のような状況にある人たち全てに「幸せな未来があるはず!」などという無責任な楽観視はできない。
でも、それでも、夢を見せてくれる映画だと思います。