伊坂幸太郎「重力ピエロ」を読みました。
断片的ですが感想などをメモしておきます。
ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。
両親はなぜ春をこの世に迎える決断をしたのか?
誰もがその点が気になり、疑問に思うだろうなあ。
もちろん私も。
それはつまり、「春は生まれてこない方がよかったのではないか?」と感じてしまう、ということ。
その感じ方が良いとか悪いとか、ではなくて。
どうしても、やっぱり、そう感じてしまう、ということ。
ということはつまり、このお話に出て来る人たち、親戚だとか世の中だとか、その方々のうちの多数が同じように感じるだろうなあ、ってこと。
そして実は泉水も「そう感じるのが普通だろうなあ」と理解してる。
だからこそ「何か理由があったのだ」と確信している。
そして、両親がその理由を口にしないことについても理解していて、問いただしたりはしない。
・・・というワケで、読者も最後までその理由を知ることができない。
・・・これは、なかなかキツい。
落ち着かない気持ちのまま読み進めるしかない。
春の存在そのものが、ものすごい重さです。
両親は、そのすさまじい重力を、存在しないかのように扱います。
そうやって生き延びていこうとします。
それでもやっぱり春は、普通の、一般的な人間と同じではいられません。
当然ですよねえ。
読者ですら最初から最後まで落ち着かないのですから。
春自身が、自分の存在そのものに関して落ち着いた気持ちになれないのは、やっぱりアタリマエ。
それでも、春は決定的に道を踏み外すことはしません。
許せない相手を退治するやり方は、いつも「ちょっとだけ過剰」という感じ。
冒頭のジョーダンバットの時も、落書き野郎への仕返しの時も。
「目には目を」を大きく越えることはしない。
しかも必ず立会人(泉水)を置く。
とてもヘンな表現ですけど、私には「両親は子育てに成功した」と感じられるのです。
葛城を退治したやり方も、要するに「死刑」なのですけど、嫌悪感はないのですよねえ。
異論・反論あるとは思いますが。
「狂人のノート」のエピソードが好きです。
春の精神状態が普通じゃないのでは? と泉水(と読者)に思わせておいて、最後にくるりと反転させる。
狂人どころか、父を思う息子の願いだったのですねえ・・・。
春は至って正常。
あ、今気がついたのだけど、春が捕まって裁きを受けても、心神喪失やら心神耗弱やらの問題にはならない、ってことですよねえ。
春は捕まっちゃうのかな?
まあ、それはどちらでもいいかな、という気にさせられます。
どういう展開になっても、絶対的味方のお兄ちゃんがいるんだから大丈夫。
会話の多い小説だなあ、と思います。
しかも、ちょっとクセのある会話が。
この作者のことはよく知らないけれど、作風なのでしょうか。
それとも、この作品特有なのかな?
直接ストーリーに関係ないように思える言葉も、何かしら意味を担っているように感じられます。
つい深読みしてしまいます。
それを狙って書かれているのか、単なる結果なのか、そこはよくわかりませんが。
この作家の他の作品も読んでみようかな、と思います。
そうそう、探偵?の黒澤がカッコイイです♪
ジャン・ポール・ゴルティエのジャケットって、どれくらいのお値段なのか私にはわからないけど、20万円で足りたみたいですね(笑)
「役所に電話するよ。」も最高!!
他の作品にも出て来るキャラクターらしい。
せっかくなので、黒澤の登場するものを読んでみようと思います。
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