映画「Wの悲劇」観ました。
公開当時は観てなくて、今回が初めてです。
断片的ですが感想などをメモしておきます。
★お腹の子を選んで演劇の世界から脱落する君子。(ハッキリとは示されていないけれど、だぶんそういうことだろう。)子供の父親と結婚して「普通の幸せ」を手に入れることになるのだろうなあ、という気がする。
★女たちを意味する「W」。劇中の女たちの情念、そして劇団の女たちのドラマ。重層的な意味を担っているけれど、中身はずいぶん違うなあ。劇中の女たちは「愛する人に自分を捧げる」だけれど、劇団の女たちは「自ら選んで自分が生きる」だ。
★配役発表のシーン、好き。夏樹静子の原作が頭の中に甦る。原作読んでなかったら、この部分の楽しみはわからないだろう。
★花束を差し出す昭夫だけど、静香がオーディションに合格していなかった場合のことも頭の片隅で想定していたみたいだ。いいヤツだ・・・。
★演技と自分自身の境界を見失い、耐えられなくなって役者をやめたという昭夫。何だか「こちら側に踏みとどまった人間」という匂いがする。
★稽古のシーン、いいなあ。劇団って、こういう感じなのかあ。
★コインランドリーにて。ツッパリが少し解けて本音を漏らす静香。そう、受け止めてくれるのは昭夫なんだよ、その正直で誠実な男なんだよ静香ちゃん、と声をかけたくなる。そして「将来の新居」のシーン。芝居をあきらめれば、その先に平凡で幸せな未来が見える。しかし運命は忍び寄る・・・。
★それにしても、劇中劇(原作)の「身代わり」エピソードとうまく重ねるなあ。原作知ってる人間にはすぐにわかるし、原作読んでない人にも舞台シーンでわかるように構成されてる。淑枝を演じる羽鳥は、演技をしているのか、それとも自分自身の苦悩を告白しているのか。いや、この女は、その状況さえ自分の演技の糧にしてしまいそうだ。そして静香はそれを自分のものとして学んでゆく。
★静香の記者会見は圧巻。これはまさに舞台。開いた口がふさがらないほどの名演。こんな形で才能が開花するとは。そしてその名演を目にした羽鳥が真実を口にしてしまう。何という因果だろう。
★「Wの悲劇」本番の舞台と舞台裏、そしてカーテンコール。ここまでのいきさつは吹っ飛んで、見入ってしまった。頑張れ静香! 頑張ったぞ静香!
★そして・・・あれ? かおりに真実を告げたのは五代ではなくて羽鳥? 羽鳥なのか? だから「今日だけは」だったのか? だとしたら・・・何というおそろしい女だろう・・・。
★羽鳥のその後は描かれないが、かおりと静香を潰して、自分は女優として生き残ったのではないだろうか。何だか「一線を踏み越えてあちら側へ行ってしまった人物」という気がする。
最後のシーンが素晴らしいです。
ボロボロになりながらも、一人で再出発しようとする静香。
それを受け入れる昭夫。
昭夫の拍手には二つの意味があるように思います。
人生の一つのステージを終えて次へ進もうとする人への応援。
それから、自分が越えられなかったものを乗り越えて行こうとする役者への称賛。
いい作品です。
何でこれまで観ないで過ごしてしまったのかなあ。
いや、若いときに観てもわからなかったかもしれない。
「薬師丸ひろ子カワイイ!」で済ませてしまったかもしれない。
今観てよかったのかも、と思います。
ところで。
劇中劇に出て来る「相続欠格」という言葉は法律用語です。
私の本業のホームページに記事を書きましたので、よかったら覗いてみてくださいませ。
こちら↓↓↓