中島京子の「家猫」を読みました。
断片的ですが感想などをメモしておきます。
ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。
4人の人間のモノローグで構成されています。
これがもう、すごくて。
全員が、全く異なる世界を見ているのです。
「恐るべき主観!」の世界なのです。
私にとっていちばん恐ろしかったのは一人目の独白者。
読み進むにつれて、ジワッと不快感が広がっていきました。
でも同時に、「私の中にもこの人物は存在する」という感覚が湧き上がって来たのです。
「まだかろうじて六十代」の女性で、世代が近いこともあるのか、やけにリアルに感じたのです。
彼女の言っていることはおかしい。
こんな母親・こんな姑は絶対にイヤ!
でも・・・。
私、彼女と同じ事をこれまでに一度も考えたことはなかっただろうか?
彼女と私は実は同類なんじゃないだろうか?
二人目の独白者は男性。
まあ何と身勝手な・・・と感じるのは、実は「2023年の日本だから」とも言えそう。
モラハラだとか精神的DVだとか、そういうものが「発見」されて、ある程度の時間が経過して、知れ渡っている。
そういう時代だから「この男、ヤバいよね」という感想になる。
それ以前だったら「よくいるタイプ」だったのかも。
私の親世代や同世代の男性たちの、いわゆる「亭主関白」ってやつ。
彼らにしてみれば、今でも「こいつのどこがオカシイの?」なのかも。
三人目の独白者は、唯一「まとも」な人物。
一人目・二人目から逃れて、自分の人生を取り戻した女性です。
思わず「よかったねぇ」と声をかけたくなってしまいます。
そんな彼女の話の中にも、実は不穏なものがあって。
友人の離婚にまつわる話です。
DVを証明するための証拠集めのくだりが???なのです。
これって、いわゆる「でっちあげDV」につながりかねない話なんじゃない? と。
真相はまさに「藪の中」だよなあ、と考えさせられました。
このエピソードが挿入されたのには、何か著者の意図があるのかなあ・・・よくわからないです。
そして四人目の独白者が「家猫」です。
いやいや、この子の思考は全く理解できない!
それは世代のせい?
もしかしたら、若いひとたちから見れば「アリ」なのかな?
いやいや、あり得ない!
なのだけど・・・
ここからは私自身の告白。
この子が今後、あいつらを引っ掻き回していくストーリーを読んでみたい!
許しがたい母親と息子に天罰のように不幸が降りかかる様子を眺めてみたい!
う~ん、私もかなり黒いようです。。。
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