「クレイマー、クレイマー」観ました。
原題は「Kramer vs. Kramer」。
原題の方がこの映画の内容をよく表してるんだけどなあ、と思います。
要するに「クレイマー対クレイマーの法廷闘争」なのです。
争われるのは息子ビリーの養育権。
法廷シーンでは、次々と互いの落度が挙げられていきます。
見ているのが辛いほどです。
でも面白いのが、そんな中でテッドとジョアンナが、相手に対する理解と自分自身に対する理解を深めていくところ。
弁護士たちは職務に忠実です。
「自分の依頼者を勝たせること」が目的なのですから。
「こちらの方がビリーの養育者としてふさわしい」ことを示すため、自分の依頼者の長所を並べ、相手方の短所を並べ立てて攻撃します。
でもそれが、テッドとジョアンナに徐々に違和感を生じさせていくのが面白い。
自分の落度を並べ立てられ、もちろん不快ではあるけれど、自分の態度を思い返してみて反省すべき点があることに気がつく。
相手の良い点を挙げられ、相手も努力をしているのだと評価する気持ちが芽生える。
結果として、裁判所の判断とは異なる形で、自分たち自身で最適解を導き出すことになるのです。
この映画を観るのは初めてではなくて、ずっと以前に観たことがあります。
20代か30代の頃だったと思います。
その時にはマーガレットの態度が理解できなかった記憶があります。
「あなたは一体どっちの味方なの?」みたいに。
でも、その印象は今回完全にひっくり返りました。
彼女は誠実な人物だ、と感じました。
どうしようもなく辛い状況にあるジョアンナに「そこから離れるのもあり」と示唆する。
テッドの父親ぶりを認めて「ビリーは父親といるのがよいと思っている」旨を証言する。
矛盾するように見えて、実は「その時点で最も必要なことは何か?」を見抜いている人物のように思えます。
これは私がトシを取ったからなのかも。
ところで。
この映画は1979年公開だそうですが、これを2023年の日本人が観たらどうなるか?
現代の若い女性にとっては、テッドのような男性は「そもそも結婚相手としてあり得ない」のでは、という気がします。
じゃあジョアンナを支持するかというと、「出て行くにしても子供を置いていくなんて!」ということになりそうな気がします。
結果、「この映画のどこが面白いの? そもそもの人物の設定がヘン!」と感じるかも。
私は1961年生まれ。
だから今観ても「理解できる世界」なのかもしれないです。
若い人に観てもらって感想をきいてみたいなあ、と思います。
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