「高齢者虐待防止法」と一般には呼ばれている法律の正式名称は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」。
何が言いたいかというと、「虐待した側に対する支援」もこの法律で定められているのだ、ということ。
お、いいことだね・・・という反応が返ってきそう。
逆に、そんなの法律に定めて何になる? と感じる方も多いかも。
これ、どちらも当たってると思う。
虐待を受けた側の保護だけでは問題は解決しないのだ、という視点を法律の中で明示したことは、とても大きな意味があると思う。
一方で、「具体的にはどうすればいいの?」という点については、この法律からは見えてこない。
虐待を受けた高齢者の側を保護するための規定はいろいろと盛り込まれている。
実際に対応するのは市町村。
立ち入り調査→高齢者を引き離して施設へ→虐待者の面会を制限、といった行動が取れるよう権限が与えられている。
一方、虐待を行った側に対しては、市町村は「養護者の負担の軽減のため、養護者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする」とされている。
これで何かが変わるの?
相談、指導、助言で「はいわかりました、これからは心を入れ替えて虐待はやめます」になるワケがないよね、もっと強力な方法はないの?
・・・と感じてしまう人も多いだろうなあ。
でも、これは仕方がない。
強制力で人の考え方や行動を変えることはムリ。
もっと根本的な部分へのアプローチが必要になるのだろうと思う。
だから、この法律に直接定めることはできなくて、現場の活動に委ねられることになる。
経済的な問題。これは比較的容易かもしれない。
各種減免制度の紹介や手続き支援、場合によっては生活保護。
これは行政の職員の「知識」で対応が可能。
でも、心理的な問題や、家族の背景に起因する問題については容易ではないだろう。
素人の行政職員の手には余る案件がたくさんあるのだろうなあ。
各自治体でいろんな研修が行われたり、専門職の投入がされたりはしてるのだろうけど。
「虐待をした側への支援」という理念は素晴らしいけれど、実際には「どうにもならない」案件は存在するのだろうと思う。
だからといって理念を捨ててしまってもいけないし。
・・・みたいなことを考える今日この頃です。