成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

ジャズ歌詞解説 ~Love For Sale~

今日の歌詞解説は Love For Sale 。

ヴァースから解説します。

早速いきましょう。

 

(Verse)

【 When the only sound in the empty street is the heavy tread of the heavy feet that belong to a lonesome cop,  I open shop 】

冒頭の When から cop までは、時を表す副詞節です。

「~する時」、「~したら」といった意味になります。

この部分がとても長いので混乱しそうですが、主節は I open shop というシンプルなもの。

文全体で、「~の時、私は店を開く」ということになります。

When から cop までは「誰もいない通りの音が、孤独な警官の重い足の重い足音だけになる時」という意味です。

empty は「無人の、人通りのない」。

tread は「足音」。

belong to ~ は「~に属する」。

lonesome は「寂しい、心細い、孤立した」という意味ですが、深夜に見回りをしている警官の心情が周囲の人にわかるはずもなく、ちょっと不思議な表現ですよね。

もしかしたら「集団行動ではなく単独で行動をしている」というだけの意味かもしれません。

あるいは、警官の靴音の響く深夜の通りの雰囲気を lonesome だと感じさせるために lonesome cop と表現してみたのかもしれませんね。

belong は単純に「属する」という意味のこともありますが、「(あるべきところに)ある」、「ふさわしい」というニュアンスで使われることもあるようです。

だとすると、「重たい足取りの重苦しい足音、この足音は寂しい者に特有のものだ。この警官は寂しさを感じているのだろう」ということなのかも。

ま、あれこれ考えるよりも、言葉からにじみ出るイメージを感じ取ることが大切なのだと思いますが。

 

【 When the moon so long has been gazing down on the wayward ways of this wayward town that her smile becomes a smirk,  I go to work 】

この文も、When で始まる副詞節がとても長くて、主節がシンプル。

全体で「~の時、私は仕事へ行く」ということになります。

When 以下の副詞節の中がちょっと複雑です。

so ~ that ... (非常に~なので・・・)という形が含まれているのです。

when から smirk までの意味は「月があまりに長い間、この気まぐれな街の気まぐれな街路をじっと見下ろしていたため、その微笑みが薄ら笑いになってしまった時」ということになります。

wayward は意味を捉えにくい単語です。

手元の辞書には「わがままな、言うことを聞かない、つむじまがりの、強情な、気まぐれの、方針の定まらない」などと書いてありました。

「こちらの思いどおりにならない」というのが基本の意味なのかなあ、という気がします。

smirk は「得意げな(したり顔)の笑み」だそうです。

にやにや笑い、ほくそ笑み、薄ら笑い、という感じでしょうか。

her smile の her は月のことだと思います。

要するに、夕方月が出てから長い時間が経過した深夜、主人公は仕事に行く、ってこと。

それまでずっと、月は、街や道を見ていた。

そこで繰り広げられる人間たちの営みは気まぐれで、わがまま勝手なもの。

最初は微笑みで見守っていた月もあきれ返ってしまい、その笑みはシニカルなものに変わり・・・というイメージを時間の経過に重ねているのですね。

 

ここまでがヴァースです。

ヴァースが歌われることは少ないと思います。

けれど、コーラスだけを読んだのでは「愛を売る」の意味を捉えきれない方がいらっしゃるかも、と思ってヴァースも解説してみた次第です。

open shop (店を開く)、go to work (仕事に行く)という表現から、主人公が「仕事として愛を売っている」のだと明確にわかりますね。

 

ではコーラスへ行きましょう。

 

(Chorus)

【 Love for sale 】

「売り物の愛」という意味の名詞句ですが、文の一部にはなっていなくて、これだけが投げ出されるように置かれています。

”not for sale” は「非売品」という意味で掲示に使われるそうです。

なので、 love for sale だと「愛売ってます」「愛売り出し中」といったスーパーのPOPみたいなものかなあ、と私は理解しています。

 

【 Appetizing young love for sale 】

「食欲をそそる若い愛、販売中」という感じでしょうか。

 

【 Love that's fresh and still unspoiled 】

「新鮮で、まだ損なわれていない愛」ですね。

 

【 love that's only slightly soiled 】

「ちょっとだけ汚れた愛」でしょうか。

soil は「よごす、汚損する、汚す、堕落させる」。

まるで少々難ありの野菜か果物みたいな・・・。

 

【 Love for sale 】

解説済。

 

【 Who will buy? 】

「誰が買いますか?」ですけれど、要するに「誰か買わない?」ってことでしょう。

 

【 Who would like to sample my supply? 】

sample は「見本を取る、見本で~の質を試す、試食する、試飲する」。

supply は「供給、支給、供給品」。

「誰が私の供給品を試しますか?」ですね。

 

【 Who's prepared to pay the price for a trip to paradise? 】

「誰が、極楽への旅に対価を払う用意がありますか?」ですね。

 

【 Love for sale 】

解説済。

 

【 Let the poets pipe of love in their childish way 】

pipe は動詞で、「笛を吹く、歌う」という意味です。

pipe of love  で「愛を歌う、愛を奏でる」といった意味になるのだと思います。

文全体で「詩人たちに、彼らなりの幼稚なやり方で愛を歌わせなさい」ということになります。

私が提供するのは、そんな子供じみたものじゃないわよ、ってことですね。

 

【 I know every type of love better far than they 】

「私は彼ら(詩人たち)よりもずっと、全てのタイプの愛を知っている」。

意味はこれで間違っていないと思うのですが、 better far than they の部分にちょっと違和感があります。

far と better が並ぶのだったら、 far が前に来るのではないか? と思うのです。

う~ん、ここはよくわからないです・・・。

 

【 If you want the thrill of love,  I've been through the mill of love,  old love, new love, every love but true love 】

「もしもあなたが愛のスリルを欲しいなら、私は100万もの愛を経験している、古い愛、新しい愛、本物の愛以外なら何でも」ですね。

every love but true love という言葉が強烈です。

ここがこの歌のクライマックスだよなあ、と私は思ってます。

 

【 Love for sale】

解説済・・・ですが、 every love but true love という言葉を聞いてしまったあとなので、より深みが感じられますねえ・・・。

 

【 Appetizing young love for sale 】

最初の方でこの言葉が出てきた時よりも、強烈さが増して感じられます・・・。

 

【 If you want to buy my wares, follow me and clime the stairs 】

wares は「商品、売り物」。

「私の商品を買いたいなら、私について来て階段をのぼって」ですね。

 

【 Love for sale 】

そして最後にもういちど「愛売ってます」。

 

以上、参考になりましたら幸いです。

著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。

皆様それぞれに試みていただければ、と思います。

/// Words by Cole Porter ///

 

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