こうの史代「さんさん録」読みましたので感想などをメモしておきます。
ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。
全2巻、34話で構成されているコミックです。
第1話は主人公の参平が置かれた状況の概観。
たった8ページに情報がてんこ盛りです。
・突然妻に先立たれ、生活が滅茶苦茶に。
・仕事人間・亭主関白だった参平。息子とは仲が良いとはいえない。
・息子夫婦は円満。参平は反面教師だったと思われる。
・息子夫婦からの同居の申し出は、おそらく「見かねて」だったのだろう。
・孫娘は個性的。「可愛い」とか「愛嬌」とはほど遠い。
・前途多難と思われる参平の頭の上に突然「亡妻の手助け」が降ってくる。
そこから先は、1話読み切りでいろんな出来事が積み重なっていきます。
ここからは1話ごとに「ひとことメモ」形式でコメントしておきます。
第2話:一寸先は闇鍋
「ああこれ お義母さんの味ですねえ」・・・息子一家と鶴子の間には暖かい交流があったのだろうなあ、参平の知らないところで。
第3話:約束
もとの家へ「約束」を取りに戻った帰り道の景色(夜になっている)が心に沁みる。
第4話:上へ下へ
皆が大忙しの中、乃菜の動きに注目・・・おつうさん、孫娘のフォローありがとう。
第5話:ぼたん雪
「ボタン付けあそび」がしたくて自分でボタン外しちゃう乃菜ちゃん最高!
第6話:としより日和
「知り合いがね お父さんの具合が悪くて苦労してるらしいの」は詩郎のこと?
第7話:かぜの館
「たんなる風邪とわかっていても こんなに心配だなんて」・・・まるで初体験のような参平、子供の詩郎が風邪ひいても「オレは仕事!」だったのだろうねえ・・・。
第8話:生命の危機
「家事の空しさ」初体験の参平・・・そして礼花の広島弁で喝!
第9話:ぽかぽか録
そしてなりゆきの主夫宣言・・・がんばれ参平!
第10話:二番煎じ
「最近ろくな事がなかった」仙川さん、リベンジお見事!
第11話:ひこう少女
第4話もそうだったけど、セリフなしの表現うまいなあ・・・。
第12話:理想と現実
2ページめ上段までは理想と現実が一致・・・その後の乖離っぷりが最高!!
第13話:母の日
家族の始まりと今・・・こうやって移ろっていくのだねえ・・・。
第14話:家人の背中
最後のページの乃菜の視界と詩郎の背中(笑)・・・参平さん、私もアイロン苦手ですっ!
第15話:三度傘
ん? 参平と仙川さん、この二人、今後何か進展があるのかな?
第16話:明暗
なんだかんだで、それなりに乃菜と仲良くなってる参平♪
第17話:真夏の傷
ねえ参平さん、おつうさんが生きてる間にプレゼントしたことあった?
第18話:ぱらぱら翁
「じいさん」VS「おじいちゃま」いいですねえ♪
第19話:aとp
礼花さんの天然っぷりが炸裂!
第20話:百面相電話
タイトルどおり、参平の百面相をお楽しみくださいませ。
第21話:はこ入り娘
51万2千円(笑)・・・乃菜ちゃんは覚えてるかもしれないですよ~、参平さん!
第22話:言わない事言えない事
仙川さん・・・そうか、そうだったのか・・・参平の「特急に乗せて松本送り」も、あながち的外れじゃなかったのだなあ・・・。
第23話:花のある暮らし
父親の鼻血を拭いてあげる優しい乃菜ちゃん・・・ぞうきんで(笑)
第24話:赤い糸
あれ? 仙川さんとおつうさん、似てるような・・・。
第25話:おもての風
「お互い様」・・・そうか、仙川さんは参平の中に詩郎を見てる、参平は仙川さんの中に鶴子を見てる、ってことかあ・・・。
第26話:犬ぬりたて
乃菜ちゃんに虫以外の友達ができたの初めてだよね♪
第27話:あたる日
結果的に仲直り出来た、ってことで、やっぱり縁起のよい日だったのでしょ♪
第28話:優しい巣
鶴子のこと、仙川さんのこと・・・内省を深めていく参平、どういう結論を出すんだろう・・・。
第29話:2月の苦悩
6~7ページ目、皆の表情の変化・仙川さんの動きの描写が秀逸!
第30話:春雷
じいさん・乃菜連合、痛恨のミス・・・礼花さんの「仕事」への思いを軽く扱ってしまいました。
第31話:春風
おお~、おつうさんが詩郎のところへ行ってる隙に仙川さんが一歩踏み出した!
第32話:春の海
子供が生まれたら負担はほとんど女性にかかって来るのだものねえ・・・礼花さんの複雑な気持ち、わかるなあ・・・。
第33話:詩郎録
「子育て」について、しみじみと考えさせられるエピソード。
最終話:見てると思わなきゃいいのよ
奥田家は新たなステージへ!
読み進めるにつれて、作品の印象が変わって行きました。
仙川さんの登場が多くなるにつれて、だったような気がします。
最初のうちは「この作品に恋愛要素は必要かな?」と疑問に思ったのです。
そんなものなくても十分にいい作品なのに、と。
でも、途中で気がついたのです。
参平は息子一家との関わりの中で変化して行きます。
そして、若い女性から見ても魅力のある男性になって行った、ということなのですねえ。
仙川さんは美人すぎるし、ちょっとおとぎ話みたいな気もしますけど。
息子一家は、新たな家族のあり方を模索して行くことになります。
だから参平も、彼らとちょっと離れて、自分の人生を歩んで行かなくちゃならない。
参平と仙川さんの今後も見てみたいなあ、と思わせられる終わり方でした。
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