成見和子のブログ

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中島京子【ローゼンブルクで恋をして】(『オリーブの実るころ』収録)

中島京子の「ローゼンブルクで恋をして」を読みました。

断片的ですが感想などをメモしておきます。

ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。

 

「プチミステリー」がたくさん散りばめられていて楽しい!

途中で答えが明かされる謎もあるし、最後まで引っ張るものも。

ドキドキしながら最後まで読めます。

 

最初の「謎」は冒頭で早速登場します。

父・豊の言う「終活」って何?

 

「ヒューゲルベルクとブライテンインゼルの間あたり」最高!

この謎は読者には早い段階で明かされるのだけど、息子・ひろしは自力で解くことになる。

この他の点でも、「『読者は知っている』けれど『ひろしは知らない』」という状況が度々出てくる。

すると読者は「答えを知りながら、ひろしの謎解きにつきあう」ことになって、それがまた楽しい。

 

ゆかママは豊の娘なのか? と思わせながら、違和感もある。

本気の恋心だとしか考えられない描写があるから。

この謎も最後にはキレイに解かれる。

この点については、読者とひろしは同時に答えを知ることになる。

こういうバリエーションが、飽きさせない工夫なんだろうなあ。

 

それにしても「ローゼンブルク」は素敵な響きだ。

いかにも恋が生まれそうな。

作者は「ローゼンブルク」という言葉を使いたくて豊を茨城出身にしたのだろうなあ。

いやいや、もしかしたら「ローゼンブルクで恋をして」というタイトルを最初に思いついたのかも。

あ、これは私の勝手な想像です。

 

不倫騒動のエピソードの使い方が上手いなあ。

ゆかママの毅然とした態度を描写するのに役立ってる。

豊がスパイ疑惑をかけられるキッカケにもなってる。

殴られた豊はどうなった? というミステリー要素も。

そしてゆかママが豊にお詫びの葉書を送り、ひろしがそれを読んで・・・という展開が実にスムーズ。

 

そしてそして最後は何といっても豊にとっての「終活」の意味。

いいなあ。

これこそ本物の終活だよねえ、と思った私なのでした。

 

この作品が収められている「オリーブの実るころ」の他の作品も必読です。

いろんなテイストのものが混じってます。

私はこの作品の他に「オリーブの実るころ」や「春成と冴子とファンさん」が好き。

「一見平凡に見える人物の奥に広がる世界」がとっても魅力的です。

 

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