重松清「流星ワゴン」読みましたので感想などをメモしておきます。
ネタバレになる部分がありますので、未読の方はご注意ください。
この小説を読んで感動した、泣いた、という人は多いと思う。
でも、そのポイントは人それぞれなのかも、という気もする。
自分の立場や置かれてる状況を重ね合わせてぐっと来る、そんな読み方をした人が多いんじゃないかなあ。
言い換えれば、読む人それぞれに、いろんなことを感じ取ることが出来るようになっている、それがこの作品のスゴイところなのかも、と思う。
だから、「この作品は何を語っているのか」なんてことには実はあまり意味がないのかも。
「私はこの部分でこう感じた」ということの方が大切、そんな気がする。
私がいちばん好きな場面。
不思議な体験から現実に戻って帰宅した主人公が、荒れた我が家の掃除を始めるところ。
「僕は僕の現実を、ここから始めなければならない。」という言葉が身にしみた。
そう、そうなんだよ、と思う。
異界から戻ったら未来は変わっていた、なんていう結末にならなくてよかった。
私がいちばん驚いた場面。
橋本親子の本当の関係を主人公が知ったところ。
幸せな家族が幸福の絶頂で事故にあう、何という悲劇!・・・ではなかった。
親子は死んでから後に関係を紡いで来たのだった・・・。
世界がくるりとひっくり返ったような気分。
私がいちばん泣いた場面。
主人公と健太が学校のグラウンドから戻ったら、車にチュウさんが乗っていたところ。
主人公の父親は、息子から嫌われたって仕方がないよね、という人物である。
この場面までのチュウさんの言動から、そのことは十分に伝わって来る。
しかし、死を前にして息子から本音を突きつけられて激しい後悔にさらされる、その姿が辛い。
でも、そのあとのチュウさんの活躍がすごい!
父親パワー全開で息子を殴る。
孫の広樹に向き合う。
母親に会いに行く健太に寄り添う。
???となった部分もある。
主人公の妻美代子の行動。
理解不能だ。
何かのビョーキ? 依存症?
少なくとも、主人公に決定的な落ち度があって、それが原因となっているワケではなさそう。
主人公に決定的な落ち度なんてないのでは?という点では、広樹に関しても同じだと思う。
確かに、広樹のことを理解せずに、よくない対応をしたことはあったかもしれない。
でも、それは「処刑」されなければならないほどのことなのか?
親は間違ってはならないのか?
完璧でなければ許されないものなのか?
ああ、そうか。
それはチュウさんだって同じだ・・・。
そういうことだよね。
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