今日の歌詞解説は The Nearness Of You です。
ヴァースから取り上げます。
早速いきましょう。
(Verse)
【 Why do I just wither and forget all resistance when you and your magic pass by? 】
まずは文全体の形の把握から。
Why do I ~ when ...? というのがおおまかな骨格です。
「... の時、なぜ私は~なのだろう?」というのが文全体の意味の大枠。
「...」部分の主語は you and your magic 、述語は pass by です。
「あなたとあなたの魔法が通り過ぎる時」ということ。
pass by は「素通りする」というニュアンスのようです。
「あなた」はちょっと通り過ぎるだけで魔法のような魅力を振りまいていくのですね。
そしてその時、主人公はどうなってしまうのかというと・・・
wither は「しぼむ、しおれる、しなびる、萎える」という意味。
憧れの人の魅力にやられてしまって、ただただ萎縮してしまうのでしょう。
resistance は「抵抗、反抗、抵抗力」。
forget all resistance で「全ての抵抗を忘れてしまう」、つまり抵抗できない、抗うことはできない、ってことなのでしょう。
メロメロ? へろへろ? 骨抜き?・・・そんな感じになってしまうのでしょうねえ。
【 My heart's in a dither, dear, when you are at a distance 】
dither は「震え、うろたえ、おろおろした状態、そわそわした状態」。
in a dither で「混乱して、おろおろして」という意味になります。
at a distance は「離れて、距離をおいて」。
あなたが距離をおいて離れている時でも私の心はうろたえて震えてしまう、ということですね。
【 But when you are near, oh, my! 】
それなのに、あなたがそばにいる時には(ああ、一体どんなことになってしまうんだろう!)・・・といった感じでしょうか。
ここまでがヴァースです。
主人公は、好きな相手が通り過ぎるだけでドキドキ、そわそわ、もう大変、という状態なのですね。
そんな主人公が、その憧れの相手を腕の中に抱いたとしたら・・・
・・・というのがコーラス、つまり歌の本体部分です。
では、コーラスを見てみましょう。
(Chorus)
【 It's not the pale moon that excites me, that thrills and delights me 】
「強調構文」と呼ばれる形です。
It's not ~ that ... で 「 ... するのは~ではない」という意味になります。
excite は「刺激する、興奮させる」。
thrill は「ぞくぞくさせる、わくわくさせる、震わせる」。
delight は「喜ばせる、楽しませる」。
全体で「私を興奮させ、ぞくぞくさせて喜ばせるのは淡い色の月ではない」ということになります。
【 Oh, no it's just the nearness of you 】
前の文と同じ強調構文で、that 以下は内容が同じなので省略されている、と考えてよいでしょう。
「ああ、違うのです、あなたが近くにいること、ただそのことが私を興奮させ、ぞくぞくさせて喜ばせるのです」ということですね。
ジャズ歌詞には「月」が大変よく登場します。
小道具として、背景として、「雰囲気を作る」存在のようです。
時に、魔法をかけたり惑わせたりする存在でもあるようで、「恋に落ちたのは月のせい」みたいなニュアンスで使われることも多いように思います。
この歌では、それを逆手に取るような感じで、「月のせいなんかじゃない、あなたがそばにいることそのものなんだ」と言っているのですね。
【 It isn't your sweet conversation that brings this sensation 】
「この感情をもたらすのはあなたの甘い言葉ではない」ですね。
conversation は「会話」とか「対話」なのですが、「言葉」の方が日本語としてはしっくりくると思います。
ここでconversation という単語が採用されたのは sensation と韻を踏ませるためでしょう。
【 Oh, no it's just the nearness of you 】
「ああ、違うのです、(この感情をもたらすのは)あなたがそばにいることそのものなのです。」ということですね。
【 When you're in my arms and I feel you so close to me all my wildest dreams come true 】
長い文ですが難しくはないです。
「あなたが私の腕の中にいて、あなたをこんなにも近くに感じる時、私の最も激しい夢がすべて実現する」ですね。
【 I need no soft lights to enchant me if you'll only grant me the right to hold you ever so tight and to feel in the night the nearness of you 】
長い長い文ですねえ。
でも難しくはありません。
まずは if 以下を切り離しましょう。
すると(もしも if 以下の条件が満たされるならば)「私は、私を魅惑する柔らかな光なんて必要ない」ということになります。
soft lights が何なのかはよくわかりませんけれど。
コーラスの最初に出てきた pale moon なのかもしれませんし、それとは違うものかもしれませんし。
いずれにせよ、雰囲気だとか演出だとか、そういったものは何もいらない、ということなのでしょう。
次に if 以下を見てみましょう。
grant という動詞がポイントです。
<要請・願いなどを>(人に)認める、許可する、という意味です。
この歌詞では<要請・願い>の部分が二つあります。
① the right to hold you ever so tight
② (the right) to feel in the night the nearness of you
の二つです。
①は「あなたをずっと強く抱きしめる権利」ですね。
②は「夜、あなたを近くに感じる権利」です。
if 以下の意味は「①と②の権利をあなたが私に認めてくれさえすれば」ということになります。
要するに、そばにいさせてくれて抱きしめさせてくれるなら他には何もいらない、ってことですね。
以上、参考になりましたら幸いです。
著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。
皆様それぞれに試みていただければ、と思います。
/// Words by Ned Washington ///
★こちらの記事もどうぞ