今日の法律用語解説は「強行規定(強行法規)」です。
なにやら難しげな・・・と思われますか?
実は、とても身近な問題に深く関わっているのです。
まずは手元の法律用語辞典で「強行規定」を引いてみると「→強行法規」と書いてあります。
そこで「強行法規」を見てみると・・・
【強行法規】法令の規定のうち、当事者の意思いかんにかかわらず適用されるもので、強行規定ともいう。(以下省略)
う~ん、これだけではよくわからないですよねえ。
なので、早速「とても身近な問題」をご紹介しましょう。
それは「部屋を借りていて、大家さんから更新を断られてしまった!」という場面のことなのです。
「契約期間は2年」と契約書に書いてあって、それは理解していたけれど、希望すれば当然更新になると思ってたのに。
大家さんは「『賃貸人が契約を更新しない旨の通知を6か月前までに行った場合は、契約は更新せずに終了する』と契約書に書いてありますよ。いきなり言われても困るだろうから『6か月前までに』と決めてあげてるのです。私は契約どおり6か月前までに通知をしました。あなたも契約を守ってくださいね。」と言います。
さあ、どうしましょ。
そういう契約をしてしまったのだから仕方がないのでしょうか?
契約書をきちんと読んで理解していなかった自分が悪いのでしょうか?
そう、こんな場合に登場するのが「強行規定」なのです。
借地借家法第30条には、こう書いてあります。
「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする」。
あ、これだけではわかりませんよね。
「この節」というのは、借地借家法26条~29条のこと。
借地借家法第30条は「26~29条に書いてあることは強行規定だから、これと異なる特約をしても無効!」と宣言しているのです。
(正確には「賃借人に不利な特約」だけが無効になる、と言ってます。)
そこで第28条を見てみると「更新拒絶の通知をする際には『正当事由』が必要である」といったことが書いてあります。
繋がりましたね。
ん? 繋がりませんか? 難しいかな?
大家さんは「正当事由」を示さずに、単純に「更新しない」と言っています。
そして、契約なのだから、つまり「当事者の合意・意思」なのだから、それでOKのはず、と言っているのです。
それに対しては「『更新拒絶には正当事由が必要である』と借地借家法第28条に書いてある。この規定は強行規定であり、当事者の意思いかんにかかわらず適用される。だから、契約書の『6か月前までに通知すれば契約を終わらせることができる』という部分は無効である。つまり契約は終了しない。」と反論すればよい、ってことになります。
(ついでに言えば、この「正当事由」をクリアするのはなかなか大変なのです。そう簡単に更新拒絶はできない、ってこと。)
いかがでしょう?
「強行規定(強行法規)」がどんなものか、少しだけでもイメージできましたでしょうか。
実は、ここで例として挙げた「借地借家法」は比較的新しい法律で、しかも「借りる側を守る」という性格がハッキリしているので、わかりやすいのです。
「この条文は強行規定である」と示されていますので。
民法などでは、その条文が強行規定であるのか、そうではないのか、きちんと示されているワケではないのです。
それぞれの条文の趣旨などから、個別に判断することになるのです。
だから実は難しい、やっぱり難しい、ってこと。
(「やさしい法律用語解説」と言っておきながらスミマセン・・・)
でも、「法令の規定に反する契約をしてOKなこともあれば、無効になってしまうこともある」ということを知っておけば、何かの役に立つかも。
自分の身を守ることができるかも、なのです。
ところで。
自分が大家さんの側だったら、「自由に契約を終わらせられない」は大問題ですよね。
転勤の間だけ自宅を貸したいけど、解約がそんなに難しいならやめておいたほうがいいのかな、みたいに。
そんな時には「定期建物賃貸借」という形の契約が存在します。
「定期借家」と呼ばれることが多いです。
ご興味のある方は借地借家法第38条をご覧くださいませ。
最後はちょっと脱線してしまいましたが、「強行規定(強行法規)」について、少しだけでも理解していただけましたら幸いです。
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