雑誌やネット上の「家計診断」みたいなの大好きです。
いろいろと参考になることもあるし、何といってもよそのお宅の家計事情が覗けるし。
うわ、家族○人で食費が月に○万円! 頑張ってるなあ・・・みたいに。
(頑張って稼いでるんだなあ、頑張って節約してるんだなあ、どっちのパターンもあり。)
よく見る相談はやっぱり「現状でローンを組んでマンションを購入するのは可能でしょうか?」みたいなの。
それから、「現在の貯蓄額で老後は大丈夫でしょうか?」みたいなのも多いなあ。
私も「老後」にさしかかってる人間です。
事情はそれぞれ、個別の要素が大きく、そのままの数字は参考になりませんが、「考え方」は大いに参考にさせてもらってます。
で、最近「あれ?」と思ったことが。
相談者が「田舎にいる兄が家を継ぐので、いずれ親が亡くなっても遺産はもらわないつもり」と言っているのに対して、回答者のFPさんが「相続分を主張して遺産を取得することも考えてみられては?」とアドバイスしてるのです。
え、これってアリなの? とビックリ。
もちろん相続人には「法定相続分」というものがあって、それを主張することに何の問題もありません。
でも、「遺産をもらわない」のもまた自由。
自分がよければ、それでよいのです。
あ、私、このブログでジャズ歌詞の解説なんかやってるけど、実は法律系の士業です。
日々、相続の相談を受けたり手続きを行ったりしてます。
いろんなケースを見てきています。
実際のところ、「法定相続分によらない遺産分割」はとても多いのです。
高齢のお父様が亡くなって、子供たち全員が「遺産は全部お母さんがもらえばいいよ、年金少ないんだし、住むところも生活費も必要だしね」と言ってる、とか。
田舎の親が亡くなって、都会に出てきている子供たち全員が「財産といっても家だけだしね。田舎に残って同居して両親の面倒を見てくれた兄さんがもらえばいいよ」とか。
こんな話になってる場合に、私の方から「あなたには法定相続分というものがあるのだから、それを主張してきちんと取り分をもらうべきです」なんてことは言いません、絶対に。
話がまとまって、皆がそれでいいと言っていれば、それでOKなのですから。
だから、FPさんの「遺産の取得も考えてみては?」に驚いたのです。
え? 専門家が紛争の種をまいちゃうの? いいの? と。
でも、よくよく相談内容を見ると・・・
現在の収入、貯蓄額、年金の見込額などを考えると、相談者の老後は大変に厳しいものになるのが明白です。
この相談者は体調が万全ではない様子。
そこへ「何とか体に気をつけながら働いて、出来れば定年後もアルバイトを」とアドバイス。
また、この相談者は日々きちんと節約している様子。
そこへ「とても頑張っておられると思いますが、もう少し支出を削るとしたら・・・」とアドバイス。
それでも老後は安泰とは言えない状況。
ギリギリ何とかなるとしても、病気や事故などが発生したらアウト、というレベル。
相談者は真面目な人柄のようで、だからこそ「親を置いて家を出た自分が相続を主張するなんてことはできない」と考えているフシもあり・・・。
う~ん、これは「もらえるものはもらって」と言いたくなるのは理解できる。
「実家に気をつかって相続を遠慮」の結果が「生活保護」になってしまったとしたら、それもまた辛いだろうなあ・・・などと考えると、私でも「あなたには法定相続分というものがあり、それを主張することは当然の権利であり、何も悪いことではないのですよ」と言うかも。
折しも、電気代やら何やらの値上げが相次いでいます。
生活は厳しくなる一方。
これまでは「遺産はいらないよ」と言っていた人たちが、「もらえるものはもらう」という態度に変わってくるかもしれないなあ。
背に腹は代えられない。
自分の身は自分で守らなくちゃならない。
「法定相続分はきっちりもらう」が当たり前になる時代が来るのかもしれないなあ、なんてことを考える今日この頃です。
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