今日の歌詞解説は The Lonely One (ロンリー・ワン)です。
早速いきましょう。
【 There is a very quiet boy they call the lonely one 】
「人々が『孤独なやつ』と呼ぶ無口な男がいる」という意味です。
「とても無口な男がいて、人々は彼を孤独なやつと呼んでいる」と表現する方がわかりやすいかもしれないですね。
quiet は、人柄や態度について使われる場合、「静かな、おとなしい、目立たない」といった意味になります。
ここでの boy は「少年・男の子」ではなくて、くだけた言い方の「男」だろうと思います。
they の前に関係代名詞 whom が省略されています。
この文の they は「総称人称」と呼ばれるもので、漠然と「人、人々」を表します。
lonely one は「孤独な男、寂しい奴」といった意味ですが、日本語にするのは難しいですね。
翻訳するとしたら、そのまま「ロンリー・ワン」としてしまう、という手もアリかもしれません。
【 There is sorrow in his face and sadness in his eyes 】
「彼の顔には sorrow があり、彼の目には sadness がある」ですね。
sorrow も sadness も「悲しみ」です。
何かしらニュアンスの違いがあるのかどうか、私の英語力ではわからないです・・・。
【 And if you look into the heart within the lonely one, you'll find it's been deceived by broken vows and lies 】
「もしも『ロンリー・ワン』の中にある心をのぞき込んだら、その心は破られた誓いと嘘で裏切られたのだとわかるだろう」という感じでしょうか。
ここの you も、最初の文の they と同じ「総称人称」だと思います。
特定の人を表しているのではなく、世間一般の人を表しているのです。
within the lonely one が修飾しているのは the heart だとも look into だとも考えられます。
the heart を修飾しているのならば「ロンリー・ワンの内側にある心をのぞき込んだとしたら」ということになります。
look into を修飾しているのならば「ロンリー・ワンの内側へと、その心をのぞき込んだとしたら」ということになりますね。
どちらでもいいのかな、という気はしますが。
後半に出てくる it は the heart を指しています。
deceive は「だます、欺く、裏切る」。
vow は「誓い」。
it's been deceived ... と、現在完了形になっているところが、この文のポイントだと思います。
現在完了形は「過去に起こった動作・状態を現在と結びつけて述べる場合」に使われます。
主人公は過去に手ひどく裏切られて、「その結果、現在のような状況になっている」ということなのです。
ところで・・・恋人同士の誓いと言えば「あなたはオンリー・ワンよ」というのがありますよね。
the only one と the lonely one ・・・狙ったものかどうかはわかりませんが、つい想起させられてしまいます。
【 Is it good to have pride with a longing to hide all your heartaches and fears? 】
「全ての心の痛みと不安を隠そうと願ってプライドを持つのは良いことなのだろうか?」と言っています。
この文の本体部分は Is it good to have pride? です。
「プライドを持つのは良いことなのか?」という疑問文ですが、yes や no といった返答を求めてはいないように思います。
誰にともなく疑問を投げかけ、明確な答えは求めずに、主人公の置かれた状況を暗に説明している、といったところでしょうか。
あるいは、no という答えを想定しているのかもしれません。
だとすれば、このような態度を取るのは良くない、それはわかっている、でも抜けられない・・・そんな「こじらせた」状態を表していることになりそうですね。
with 以下は、「プライドにしがみついている状況」に説明を加えているのだ、と理解するとよいと思います。
文法的には、「同伴・随伴」、「手段」、「原因・理由」、「態様」を表す前置詞 with の用法である、と説明することになりそうです。
(どれに当たるのか? と考えすぎても結論は出ませんし、何となくでもニュアンスを感じ取れれば、それでOKだと思います。)
longing to ~ は「~しようとする切望・熱望」。
heartache は「「心痛、悲嘆」。
your は、具体的な誰かを指して「あなたの」と言っているのではなく、一般的なことを言っているのだと思われます。
【 Is it wise to be cold and to struggle to hold back the tears? 】
「冷静でいること、涙をこらえようと闘うことは、賢いことなのだろうか?」ですね。
この疑問文についても、前の文で考察したことがそのまま当てはまりますね。
cold は「冷静な、冷淡な、よそよそしい」。
struggle to ~ は「~しようとあがく、戦う、懸命に努力する」。
hold back は「引っ込める、押しとどめる、制御する、隠す」。
【 If you could only see the boy they call the lonely one, you'd know that since you're gone the lonely one is me 】
「もしも君がロンリー・ワンと呼ばれる男に会うことが出来さえすれば、君が去って以来、ロンリー・ワンは僕だってことがわかるだろう」と言っていますが、意味を理解するのが少し難しいですね。
この文のポイントは3つあると思います。
仮定法過去の形になっていること。
you という特定の人物が突然登場すること。
それから、初めて me という1人称の代名詞が出てきて、語り手=主人公であることが判明すること。
仮定法過去は「現在の事実の反対の仮定、または現在または未来についての可能性の乏しい想像」を表します。
そして、この文の you は、主人公を裏切って去った女性のことを指しています。
主人公は以前恋人?だった女性に手ひどく裏切られ、そして彼女は去ってしまった。
その彼女と今後会う可能性は乏しいけれど、もしも会ったとしたら、彼女は主人公が「ロンリー・ワン」と呼ばれる状態になっていることを知るだろう・・・と言っているのですね。
この歌では、最後の文だけが「主人公自身のこと」として語られる形になっています。
それまでは、まるで解離を起こしてでもいるかのように、人ごとのように、「ロンリー・ワン」が語られていました。
そこには、主人公 I も相手の女性 you も登場しなかったのです。
それが最後の一文で突然、リアルなものとして迫って来ます。
この構造が、この歌の切なさを倍増させている・・・そんな気がします。
以上、参考になりましたら幸いです。
著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。
皆様それぞれに試みていただければ、と思います。
/// Words by Roberta Heller///
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