成見和子のブログ

日々雑感、ジャズ歌詞、映画、読書。

ジャズ歌詞解説 ~Satin Doll~

今日の歌詞解説は Satin Doll (サテン・ドール)です。

早速いきましょう。

 

【 Cigarette holder which wigs me 】

これは文にはなっていないです。

名詞「シガレットホルダー」に関係代名詞がくっついて説明が加えられているだけ。

wig は名詞だと「かつら」ですが、ここでは動詞です。

素直に考えると「かつらをかぶせる」ですが、ここは「興奮させる」という意味で使われる俗語のようです。

全体で「僕を興奮させるシガレットホルダー」ということになりますね。

文になっていない、ということは論理じゃなくて感覚・視覚の世界だってこと。

あの女いいよな、シガレットホルダーが格好いいぜ、みたいな。

何で cigarette holder なのかというと、次の文と韻を踏ませるため。

holder と shoulder、wigs と digs。

もちろんそれだけじゃなくて、この時代の重要なファッションアイテムだったのだろうな、と思います。

 

【 Over her shoulder she digs me 】

「肩越しに彼女は僕を見る」ですね。

語順を元に戻すと She digs me over her shoulder となります。

dig は「掘る」ですが、俗語ではいろんな意味に用いられるようです。

見る、聴く、~に注目する、などなど。

もちろん、もともとの意味から派生しているのですから、「掘るように見たり聴いたりする」感じなのでしょう。

この歌では、女が男を dig するのですから、「品定め」的に見てる状況なのでは、と思います。

 

【 Out cattin' that Satin Doll 】

文法的にどうなっているのか、よくわからない文ですよね。

動詞が省略され、さらに語順が変わっているのかもしれません。

元の形としては、いくつか考えられると思います。

That Satin Doll is out catting

That Satin Doll is catting out

She is out catting, that Satin Doll

She is catting out, that Satin Doll

・・・う~ん、どれもアリ、どれでもOKという気がしますね。

さらに言えば、前の文とつながっている、と考えることも可能です。

だとすれば、分詞構文だと考えることになります。

いずれにしても、言いたいことは同じだと思いますので、あまり深く考えないことにしましょう。

Satin Doll は「サテンの人形」ですが、ここでは「サテンで作られた人形みたいに華やかな女の人」だと思います。

サテンは布の名前。

色々説明するより、「サテン」で検索してみてくださいませ。

あ、こんな感じか、とわかります。

doll には俗語で「女」という意味もありますから、「サテンの衣装をまとった女」だと考えることもできますね。

無理に日本語にするよりも、そのまま「サテン・ドール」と訳してしまうのがよいと思います。

cat は動詞。

「猫」を意味する cat と同じ単語です。

俗語で「ナンパする」といった意味のようです。

女性が主語だと「男を漁る」みたいな感じでしょうか。

out は副詞で「外へ、外で」。

屋内の光景ではない、とわかりますね。

街中での一コマ、ってことでしょう。

全体で「あのサテン・ドールは外へ出て獲物を狙ってる」ぐらいの意味でしょう。

 

【 Baby shall we go out skippin' 】

「ベイビー、出かけようよ。スキップしながら」。

いい女が自分に気がありそうなので誘ってみた、というワケですね。

 

【 Careful, amigo, you're flippin' 】

「気をつけろよ、アミーゴ。調子に乗ってるぞ」といったところでしょうか。

amigo は「友達、仲間」ですが、ここでは自分自身への呼びかけに使われています。

冷静さを保とうとする気持ちの表れ、ですね。

flip はもともとの意味は「はじく、ひっくり返す」ですが、ここでは「興奮する、狂喜する」という意味です。

外部の対象物に対する意味が、内部の精神状態に転用されている、と考えると腑に落ちると思います。

 

【 Speaks Latin that Satin Doll 】

「あのサテン・ドールはラテン語を話す」・・・???。

もちろん実際にラテン語を話すワケではありませんよね。

何かしら洒落たことを言ったのでしょうか。

それとも真意を測りかねる、「罠かな?」みたいなことを言うのでしょうか。

もしかしたら意外に知性を感じさせるようなことを喋ったのかも、ですね。

 

【 She's nobody's fool so I'm playing it cool as can be 】

be nobody's fool は慣用句で、「なかなかどうして抜け目がない、利口だ」という意味です。

play it ~ は「~にふるまう」。

play it cool だと「冷静にふるまう」となりますね。

cool as can be は as cool as can be の最初の as が省略されたものだと考えられます。

as ~ as can be は「最高に~だ、この上なく~だ、思い切り~だ」です。

全体で「彼女はなかなか利口だ、だから僕はこの上もなく冷静にふるまっている」という意味になりますね。

 

【 I'll give it a whirl but I ain't for no girl catching me 】

「やってみるよ、でも僕を捕まえておこうとする女はイヤなんだ」。

whirl は「回転、渦巻、旋風」ですが、ここでは口語で「試み、企て」という意味。

give it a whirl で「試みる、やってみる」という意味になります。

ここでは「彼女にアプローチしてみる」ってことですね。

I ain't for no girl ~ の部分は注意が必要です。

否定語が二つあって、一見、二重否定=肯定だと思えるのですが、実はそうではないのです。

くだけた言い方や俗語では、否定語を重ねて単なる否定を表すことがあり、ここはそれだと考えられます。

後半は I am not for girl catching me だと考えて理解する必要があるのです。

for は「賛成できない」という意味。

なので、ここは「僕を catch しようとする女の子には賛成できない、嫌いだ、イヤだ」ということになります。

catch は「捕らえる、つかまえる、」。

主人公は、「素敵な女がいたので付き合いたい、でも捕まえられて束縛されるのはイヤ」みたいな気分なのでしょうね。

 

( Switch-e-rooney )

これはかけ声みたいな感じで、歌う歌手もいますし、歌わない人もいます。

特に意味はないのかな? と思ったのですが、辞書に switcheroo という単語がありまsた。

「不意の転換、逆転、突然の変化、どんでん返し」という意味なのだそうです。

ということは、この単語の語尾に ney をくっつけてかけ声みたいにしたのでは? と思います。

「どんでんがえし~~」みたいな感じでしょうか。

だとすれば、ここから後の歌詞は、どんでん返し的な意味を持つことになりますね。

 

さて。

ここから先が難しいのです。

実は解読できていないのです。

「こうかな?」と思うのが2パターンあって。

なので、現時点ではその2パターンを載せておきます。

 

【解読候補その①】

【 Telephone numbers, well, you know 】

「電話番号たくさん、えっと、知ってるんだね」。

telephone numbers と複数形になっていますから、これは主人公の番号のことではありませんよね。

連絡先を知っている男が複数いる、ってことでしょう。

主人公はそれを知って、「あ、そうなんだ・・・」とちょっとショックを受けてるのかな、と思います。

いい女がいて、クールに振る舞ってトライしてみよう、付き合えるかな、モノにできるかな、なんて考えてたのだけど。

うまくいったとして相手が自分に夢中になってしまったらヤヤコシイな、それはイヤだな、なんて考えてたのだけど。

全然お呼びじゃなかった、ってことですね。

 

【 Doing my rhumbas with uno 】

主語と述語が省略されていると思われます。

元の形は I'm doing my rhumbas with uno だろうと思います。

「僕は一人でルンバを踊ってるんだね、独り相撲なんだね。」という感じでしょうか。

uno はスペイン語で「1」。

前の文の you know と韻を踏ませるために無理やり使ったのかな? という気がします。

with uno は「独りで」という意味で使われているのだと思うのですが、ここは確信は持てないです。

 

【 And that'n' my Satin Doll 】

that'n'(または that'n )は that and の短縮形です。

rock and roll が rock'n roll (ロックンロール)となるのと同じ。

では that and my Satin Doll とはどういう意味なのか?

「 that Satin Doll であり my Satin Doll 」とは考えられないでしょうか。

最初に主人公がサテン・ドールを見たときには、ちょっと距離を置いた「あのサテン・ドール」だった。

それが、付き合えたらいいな、と考えたり、もしかしたらちょっと付き合ったりしてるうちに「僕のサテン・ドール」になってしまった。

遊びのつもりが本気になっちゃった、みたいな感じなのではないかなあ、と思うのです。

最初の and には接続詞としての深い意味はなくて、調子を整えるために挿入されているのでは、という気がします。

ただ、ネット上の考察をいろいろと調べてみても、このように考えているものは全く見当たりません。

間違っているのかなあ・・・とも思うのですが、やはり、この理解は捨てきれません。

 

【解読候補その②】

まずは、この部分の歌詞を再度書いてみます。

候補①と改行の場所が異なっていることにご注目下さい。

 

【 Telephone numbers 】

【 Well, you know 】

【 Doing my rhumbas with uno and that'n' my Satin Doll 】

 

you know を「君は知っている」ではなくて、「ねえ、あのさ」といった間投詞的なものと考えます。

uno は「独りで」ではなく「唯一の」だと考えてみます。

その上で、uno and that and my と連なっている、と考えます。

すると、この部分の意味は以下のような感じになると思います。

 

電話番号がたくさん・・・

えっと あのさ

僕は君とだけルンバを踊ってるんだよ

唯一の あの 僕のサテンドールと

 

う~ん、こちらの理解もアリだと思います。

結論は出ないです・・・。

 

いかがでしょう。

うまく解読できない部分もありましたが・・・

何かしら参考になる部分がありましたら幸いです。

著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。

皆様それぞれに試みていただければ、と思います。

/// Words by Johnny Mercer///

 

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