成見和子のブログ

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ジャズ歌詞解説 ~My Foolish Heart~

今日の歌詞解説は My Foolish Heart (マイ・フーリッシュ・ハート)です。

ヴァースから歌っているものを聞いたことはないのですが、ヴァース部分も読んでみることでコーラスの歌詞の理解が深まると思います。

早速いきましょう。

 

(ヴァース)

【 The scene is set for dreaming 】

scene は日本語で「シーン」でも通じますね。

「舞台、場面」です。

set という動詞は日本語で「セットする」でも通じそうですね。

ここでは「整える、用意する」です。

is set と受動態になって「整えられた」という意味になります。

前置詞 for は「~に向かって、~のために」という意味。

dreaming は動詞 dream に ing がくっついて名詞的な働きを持つようになったもの。

「夢見ること」ですね。

文全体で「夢見る舞台は整えられた」ということになります。

 

【 Love's knocking at the door 】

knock は「ノックする」です。

love がやって来てドアをノックしているのですね。

 

【 But oh, my heart, I'm reluctant to start for we've been fooled before 】

my heart は「ねえ、私の心さん」と呼びかけているのです。

reluctant は「気が進まない」です。

reluctant to start で「スタートする気になれない」ですね。

愛がやってきてドアを叩いているのに、ドアを開けて迎え入れるのには躊躇がある、そんな気分なのですね。

その理由が for 以下で説明されています。

「私たちは以前に騙されたことがあるから」なのです。

fool はここでは動詞で、「だます」という意味です。

we は「私の心」と「私」です。

主人公は、自分の心と対話しているのですね。

 

ここまでがヴァースです。

状況がイメージできましたよね。

ではコーラスへ進みましょう。

 

(コーラス)

【 The night is like a lovely tune 】

tune は「曲、歌曲、旋律」。

「夜は美しい曲みたいです。」とは一体どういう状況なの? ですが、あまり深く考えなくてもいいかもしれないですね。

要するに、舞台が整って、まるで美しい歌曲みたいな世界になっている、ということなのでしょう。

 

【 Beware, my foolish heart 】

beware は「用心する」という意味の動詞です。

ここでは、この動詞一語で命令形になってます。

「気をつけなさい!」ということですね。

誰に対して「気をつけて!」と言っているのかというと、それが my foolish heart です。

ヴァースにも出てきたように、この歌は「私」と「私の心」との対話で出来ているのです。

foolish は「愚かな」という意味ですが、my foolish heart を「私の愚かな心」としてしまうと、ちょっと違うかなあ、という気がします。

ヴァースにも出てきたとおり、この主人公は以前に恋で失敗して痛い目にあったことがあって、自分の判断力にちょっと自信が持てない。

そんな状態を「前にも騙されたことがある、おバカな私の心さん」と表現しているのだと思います。

 

【 How white the ever constant moon 】

constant は「不変の」。

ever は「いつも、常に」。

the ever constant moon で「いつも変わらぬ月」ですね。

そんな月が今夜は「何て白いんでしょう!」。

この文は感嘆文だろうと思います。

moon のあとに動詞 is が省略されているのだと思います。

white が「明るく輝いて美しい」なのか「青白くて不気味」なのか、どっちなのかはよくわからない・・・です。

 

【 Take care, my foolish heart 】

take care は「用心する、気をつける」。

先に出てきた beware と同じですね。

これも命令形です。

 

【 There's a line between love and fascination 】

この文のキモは fascination という単語にあると思います。

辞書によると「魅せられること、魅惑、うっとりすること、魅了」だとのこと。

love と対比して、一時的、表面的、刹那的・・・みたいなニュアンスなのかなあ、と思います。

「ホンモノ~ニセモノ」という対立軸でも解釈できるかもしれませんね。

ぴったりくる日本語が見つからない、難しいニュアンスの単語だと思います。

line は「線、境界線、境界」。

「ライン」でも通じそうですね。

fascination と love の間には境界線がある、そこを見誤らないでね、気をつけてね、と自分の心に語りかけているのですね。

 

【 That's heard to see on an evening such as this 】

that は a line を指しているのだと思います。

that's heard to see で「それ(境界線)を見るのは難しい」ですね。

on an evening such as this は「こんな夜には」。

 

【 For they both give the very same sensation when you're lost in the magic of a kiss 】

最初の for は接続詞で、理由を示す機能があります。

「なぜなら・・・」という感じ。

この文は、前の文の「こんな夜には境界線が見えなくなってしまう」に対して、その理由を説明しているのです。

they は love と fascination のことです。

sensation は「感覚、知覚、感情、気持ち」。

give は通常「あげる、与える」と理解されることが多いですが、ここでは「(自然または物理的作用の結果として)生じる、発する、生む」という説明がぴったりくると思います。

「love と fascination、どちらも全く同じ感覚を生じさせるもの。だから境界線が見えなくなってしまう、見分けがつかなくなってしまう。」ということなのですね。

で、どんな状況で「全く同じ感覚が生じる」のかというと、when 以下で説明されています。

「キスの魔法に我を忘れてしまう時」ですね。

be lost in ~ で「~に(我を忘れて)夢中になる、没頭する」という意味です。

 

【 His lips are much too close to mine 】

「彼の唇が近すぎる」ですね。

 

【 Beware, my foolish heart 】

「私の foolish な心さん、気をつけて!」と言っていますが、和訳するとしたら foolish をどう訳すんだろう? 難しいだろうなあ、と思います。

 

【 But should our eager lips combine then let the fire start 】

これは難しい文ですね。

if が省略されているのです。

元の形を復元すると if our eager lips should combine となります。

if が省略された上に、語順がひっくり返って should が前に出て来ているのです。

「もしも私たちの eager な唇が combine したとしたら」という意味です。

combine は「結合する、結びつく」という意味。

「唇が結合する」ではあんまりですから、訳すとしたら「唇が重なる」といったところでしょうか。。

eager は「熱望して、切望して、~したがっている」という意味の形容詞。

訳すのは難しいでしょうねえ・・・。

let ~ ... は「~に...させなさい」という命令文です。

誰に対して命令しているのかというと・・・my foolish heart しか考えられないです。

この歌は I と my foolish heart が対話しているのですから。

命令というよりは、対話の末に「そうやってしまおう!」と合意した、というニュアンスかもしれないですね。

「もしも唇が重なったとしたら、その時は fire をスタートさせちゃおう!」という感じでしょうか。

fire は「炎、情火、情熱」です。

 

【 For this time it isn't fascination or a dream that will fade and fall apart 】

文頭の for は接続詞。

理由・根拠を示します。

前の文に続けて「なぜなら、今回は、これは fascination じゃないのだから」と言っているのです。

or にはいろんなニュアンスがあって、「AまたはB」のこともあれば「AすなわちB」のこともあります。

ここでは「AすなわちB」なのではないかなあ、と思います。

「魅惑、すなわち fade して fall apart してしまう夢」ということですね。

fade は「(色が)あせる、(音や光が)消えていく、しぼむ、しおれる」です。

日本語でも「フェードアウト」なんて言いますよね。

fall apart は「ばらばらにこわれる」です。

 

【 It's love 】

これは愛なの、と言っていますが・・・「言い聞かせる」、「そう思いたい」というニュアンスなのかもしれません。

 

【 This time it's love my foolish heart 】

「今回は愛なのよ、私の foolish な心さん!」ですね。

う~ん、最後の最後まで foolish にピッタリな日本語が見つかりませんでした・・・。

 

以上、参考になりましたら幸いです。

著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。

皆様それぞれに試みていただければ、と思います。

/// Words by Ned Washington ///

 

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