今日の歌詞解説は More Than You Know (モア・ザン・ユー・ノウ)。
歌手によって微妙に歌詞が異なっているようですが、ここではサラ・ヴォーンが歌っているものを採用しました。
ヴァースから取り上げます。
早速いきましょう。
(ヴァース)
【 Whether you are here or yonder, whether you are false or true, whether you remain or wander, I'm growing fonder of you 】
相手がどんな状況であろうとも、どんどん好きになってしまう・・・という主人公の思いを表しています。
whether you are here or yonder は「あなたがここにいても向こうにいても」。
whether は接続詞で、ここでは「~であろうとなかろうと、いずれにせよ」という意味です。
yonder は古い言葉で「あそこに、向こうに」。
wander や fonder と韻を踏むために使われているのだと思います。
whether you are false or true は「あなたが不実でも誠実でも」。
false と true は「間違った」と「正しい」ですが、ここでは人物を形容しているので「不誠実な」と「誠実な」ということになるでしょうか。
whether you remain or wander は「あなたが留まっていてもさすらっていても」。
remain は「とどまる、滞在する」。
wander は「さまよう、放浪する、さすらう」。
I'm growing fonder of you は「私は次第にますますあなたが好きになっていく」。
fond は「好きで、愛して」という意味の形容詞です。
fond of you で「あなたが好きで」という意味になります。
ここでは fond が比較級の fonder となり、さらに「しだいに~になる」という意味の grow と結びつき、さらにそれが進行形となっています。
しだいに愛がふくらんで、ますます好きになる、という感じがよく表れていますね。
【 Even though your friends forsake you, even though you don't succeed, wouldn't I be glad to take you, give you the break you need 】
主人公は、どんな状況であっても相手を受け入れて、必要な癒やしをあげる、と言っています。
even though your friends forsake you は「たとえ友人たちがあなたを見放しても」。
forsake は「見放す、見捨てる」。
even though you don't succeed は「たとえあなたが成功しなくても」。
succeed という単語は難しいなあ、といつも思います。
辞書には「成功する、出世する、繁昌する・・・」と並んでいるのですが、どの日本語を採用しても、その時点で意味合いが固定されてしまうような気がして。
「うまくいく」といった日本語を当ててみても、それはまた漠然としすぎる気がしますし・・・。
wouldn't 以下は否定の疑問文ですが、実質は肯定を表しています。
「~ではないでしょうか?」と言いつつ、意味するところは「~なのです。」ということ。
ここでは I would be glad to take you, give you the break you need と言っているのと同じ。
「私は喜んであなたを受け入れて、必要な癒やしをあげるでしょう」ということになりますね。
be glad to ~ は「喜んで~する」。
take はここでは「受け入れる」といった意味じゃないかなあ、と思います。
give you the break you need は「あなたが必要とする癒やしを与える」。
break は「休憩、小休止、休み時間」。
この頃はやりの「癒やし」という日本語がピッタリくるのでは、という気がします
give ~ a break で「~を一休みさせる」という意味になります。
break のあとに関係代名詞が省略されています。
以上がヴァースです。
歌われることは少ないかもしれませんが、ヴァースの内容を知っておくと、コーラス部分の理解が深まると思います。
ではコーラスへいきましょう。
(コーラス)
【 More than you know, more than you know, man of my heart, I love you so 】
man of my heart が難しいです。
そのまま考えると「私の心の男」。
つまり、主人公にとって最も大切な、唯一無二の男性、ということなのかな、と思います。
辞書に man of God(聖職者)、man of letters(学者、文学者)といった例があったので、それと同じかなあ、と考えたのですが、ちょっと自信ないです・・・。
で、その man of my heart に対して主人公は呼びかけるのです。
あなたが考えてるよりもずっとずっと、私はあなたをこんなにも愛しているのよ、と。
【 Lately I find you're on my mind, more than you know 】
find のあとに that が省略されています。
主人公が find した内容が you're on my mind だということ。
あなたのことが気にかかっている、あなたが知っている以上に気になっている、そのことに最近気がついた、というのです。
前置詞 on の基本の意味は「接触」です。
on my mind は「心にくっついている」ということ。
状況に応じて、「気にかかる、心配している、悩んでいる」といった意味になります。
【 Whether you're right, whether you're wrong, man of my heart, I'll string along 】
whether you're right は「あなたが正しくても」。
whether you're wrong は「あなたが間違っていたとしても」。
man of my heart は呼びかけ。愛する相手のこと。(コーラスの最初の文のところで検討しました。)
string along は「くっついて行く、従う、同調する」。
【 You need me so more than you'll ever know 】
you need me so は「あなたは私をとても必要とする」。
more than you'll ever know は「あなたが思うよりもずっと」ですが、ここでは未来形になっています。
more than you know だと、「あなたが現在認識している、その認識を越えて、それ以上に」です。
これが未来形になって、さらに ever という強調の言葉が加わっていますから、「あなたが将来認識するであろう、その認識を越えて、さらにそれ以上に」ということですね。
「あなたには絶対にわからないレベル」だと言っているのかな、と思います。
あなたには私が必要なのよ、わからないでしょうけど、これからもわかることはないでしょうけど、といった感じでしょう。
【 Loving you the way that I do, there's nothing I can do about it 】
loving you the way that I do は「私みたいにあなたを愛すること」。
loving は動名詞で、loving you は「あなたを愛すること」です。
the way ~ は「~のように、~のとおりに」。
the way that I do で「私のやるように」ですね。
「わたしが行っている、そういうやり方で」ということです。
there's nothing I can do about it は「それについて私ができることは何もない」。
自然とそうなってしまい、自分ではコントロールできない、ってことですね。
【 Loving may be all you can give, but, honey, I can't live without it 】
loving may be all you can give は「『愛すること』が、あなたが与えることのできる全てなのかもしれない」という意味です。
この loving が「私があなたを愛すること」なのか「あなたが私を愛すること」なのか、迷います。
後者だと考えると、I can't live without it は「あなたの愛がなければ私は生きていけない」という単純な意味になります。
でも、ここまでの歌詞の内容からすると、主人公にとって「自分が相手を愛すること」が重要なのですよね。
相手がどうであろうと、自分は相手を愛してしまう、それは自分ではどうにもならない、と言っているのです。
そこから考えると、この loving は「私があなたを愛すること」なのかなあ、という気がします。
主人公は相手の男性と一緒にいても、お金持ちになれるとか、贅沢ができるとか、そういうことは見込めないかもしれない。
一緒にいて自分にもたらされるのは、ただ「こんなふうに愛すること」だけなのかもしれない、でもそれが自分の生きがいなの、そう言っているように感じます。
【 Oh, how I'd cry, oh, how I'd cry, if you got tired and said "good bye", more than I'd show, more than you'd ever know 】
how I'd cry は「私はどんなに泣くことでしょう」。
if you got tired and said "good bye" は「もしもあなたが私を嫌いになって『さよなら』を言ったとしたら」。
tired は「疲れた、飽きた、いやになった、愛想がつきた」。
more than I'd show は「私が表すよりももっと」。
show はここでは「感情などを表す」です。
もしも愛する人から別れを告げられたとしたら主人公は泣くことになるのですが、内面の悲しみは、外へ現われる「泣く」という形よりももっともっと大きいだろう、と言っているのですね。
そして、最後に more than you'd ever know と締めくくります。
その悲しみはあなたが思うよりもずっとずっと大きいだろう、想像できないほど大きいだろう、ということです。
以上、参考になりましたら幸いです。
著作権の関係上、ここでは解説以上に踏み込んだ翻訳・和訳をすることはできません。
皆様それぞれに試みていただければ、と思います。
///Words by Billy Rose & Edward Eliscu///
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