今日の歌詞解説は Bewitched, Bothered, And Bewildered です。
タイトルを "Bewitched" として、邦題を「魅せられて」「魅惑されて」などとしている場合もあるようです。
この曲の歌詞の著作権は消滅していて、自由に利用ができる状態になっています。
なので、翻訳にもトライしてみました。
解説のあとに全文の和訳を載せてありますので参考になさってくださいね。
では、ヴァースからいきましょう。
(Verse)
【 He's a fool and don't I know it 】
fool は「ばか、ばか者」。
歌詞の最初から「彼はバカなの」とは強烈ですねえ。
don't I know it は疑問文で、「私はそれを知らないのか?」ですけど、ここでは「Yes(知っています)」という答えが予期されています。
しかも自分で自分に質問しているのですから、「彼がバカなヤツだって、もちろんわかってるのよ。」といったニュアンスでしょう。
【 But a fool can have his charms 】
charm は「魅力」。
助動詞 can は「~でありうる」という可能性を表します。
直訳だと「バカな人間が魅力を持ちうる」となりますが、「バカなヤツが魅力的だったりするのよね」というニュアンスだと思います。
【 I'm in love and don't I show it like a babe in arms 】
I'm in love はもちろん「私は恋してる」です。
don't I show it は疑問文で、歌詞の最初の don't I know it と同様、「Yes」という答えを予定しています。
「私は恋してる、そのことを私は見せていない? いえ、見せてしまっているわよね」つまり「バレバレよね」という感じでしょう。
like a babe in arms は「腕の中の赤ちゃんのように」。
まだ抱っこされてるちいさな乳児みたいで、感情のコントロールができず、本能にまかせて・・・ということなのでしょう。
【 Love's the same old sad sensation 】
love は sad sensation だ、と言っています。
悲しい、哀れな、みじめな感情だ、と。
この恋はバラ色ではないのですねえ。
same で old だとも言っています。
same は「同じ、同じような、よく似た」。
old は「古くからの、昔なじみの、なつかしい」。
つまり、主人公は以前にも辛い恋をしたことがあって、その時と同じ感覚をまた味わってる、ってことなのだと思います。
【 Lately I've not slept a wink since this half-pint imitation put me on the blink 】
wink は「まばたき」。
not sleep a wink で「一睡もしない」です。
このところ一睡もできていない、その理由が since 以下に述べられています。
half-pint はもともと「半パイント(パイントは液量の単位)」という意味ですが、「ちび、坊や、取るにたりない人」という意味で使われるようです。
imitation は、そのまま「イミテーション」でも通りますよね。
「模造品、まがい物、にせもの」です。
half-pint imitation はもちろん主人公が恋した相手の男のこと。
すごい表現ですよね。
自分が恋した男が、取るに足らないニセモノだと、主人公はしっかりわかってる。
でも、それなのに、恋してしまって・・・ということ。
on the blink は「調子が悪い、不調である」。
put me on the blink で「 私を具合悪くさせる」です。
ニセモノの男への恋わずらいで夜も眠れず・・・なのですねえ。
ここまでがヴァースです。
続いてコーラスを見てみましょう。
(Chorus)
【 I'm wild again, beguiled again 】
wild はそのまま「ワイルド」でもよさそうですけど、日本語っぽくするなら「取り乱した、興奮した」という感じだと思います。
beguile は「だます、欺く」、「気をひく、惑わす」。
【 A simpering, whimpering child again 】
文頭に I'm が省略されています。
(もしくは、前の文にそのまま繋がっているのかもしれません。)
simper は辞書によると「間の抜けた笑い方をする、にたにた笑う」とのこと。
笑うつもりじゃなくても、つい頬がゆるんでしまう、という感じなのでは、と思います。
whimper は辞書によると「ぐずるように泣く、べそをかく」だとのこと。
感情の振れ幅が大きくなって、すぐに涙が出る、みたいな感じでしょうか。
主人公はまるで子供みたいになっているのですねえ。
【 Bewitched, bothered and bewildered am I 】
本来の語順は I am bewitched, bothered and bewildered ですが、倒置されています。
bewitch は「魔法をかける、魅する、うっとりさせる」。
bother は「悩ませる、困らせる」。
bewilder は「うろたえさせる、戸惑わせる」。
【 Couldn't sleep and wouldn't sleep when love came and told me I shouldn't sleep 】
文頭に主語 I が省略されています。
I couldn't sleep は「私は眠れなかった」。
wouldn't sleep は「私は眠れないだろう」。
would はここでは「現在の弱い推量」を表しているのだと思います。
「たぶん~だろうなあ」ぐらいの感じだと思います。
when 以下は「愛がやってきて私に『寝てはならない』と告げた時」。
ちょっとわかりにくいですよね。
どう訳すかは考えどころです。
【 Bewitched, bothered and bewildered am I 】
また出てきました。
「私は魅せられて、悩まされて、惑わされているの」ですね。
【 Lost my heart 】
主語 I が省略されています。
【 But what of it? 】
what of it? は慣用句で、「で、それがどうしたというのだ?(どうってことないだろう)」という意味。
【 He is cold, I agree 】
彼は冷たい、認めるわ。
・・・う~ん、辛いですねえ。
【 He can laugh but I love it although the laugh's on me 】
先に although 以下を見てみましょう。
ここでの laugh はあまりよくない意味の「笑い」だろうと思います。
「笑いぐさ、あざけり」みたいな。
the laugh's on me は「その笑いは私に向かったものである」ということでしょう。
although the laugh's on me で「その笑いが私に向けられたものなのだとしても」です。
文全体では「彼は笑うかもしれない。でも私はその笑いを愛する。たとえそれが私を笑いぐさにするものだったとしても」となります。
【 I'll sing to him, each spring to him and long for the day when I'll cling to him 】
sing to の to は「~に合わせて」というニュアンスだと思います。
私は彼に合わせて歌うだろう、毎春彼に合わせて歌うだろう、ですね。
春に鳥が一生懸命さえずるようなイメージかなあ、と。
and のあとの long は動詞です。
前置詞 for がくっついて、「~を思い焦がれる、~を切望する」という意味。
cling は「まとわりつく、しがみつく」。
cling の主語になるのは「物、動物」というイメージがあります。
人だったとしても、普通の大人じゃなくて「ちいさな子供」のイメージです。
つまり、主人公は恋する相手と対等な関係になりたい、なんて大それたことは望んでなくて、小鳥のようにさえずりながら、いつか近くでまとわりつくようになれれば、なんてことを思っているのでは、と感じさせる動詞なのです。
・・・もしかしたら深読みが過ぎるかもしれませんが。
【 Bewitched, bothered and bewildered am I 】
そして最後にもういちど Bewitched... です。
以上を踏まえて和訳です。
<ヴァース>
彼はバカなやつなの
そんなことわかってるわ
でもバカなやつが魅力的たっだりするのよね
私は恋してるわ バレバレよね
まるで赤ちゃんみたい
恋は哀しい感情だわ いつもそうよ
このごろ私一睡もしてない
あのしょうもないニセモノのせいで調子がヘンなの
<コーラス>
私また取り乱しちゃってる
また惑わされちゃってる
つい笑っちゃったり 涙が出ちゃったり
まるで子供に戻ったみたい
魅せられて 悩まされて 戸惑っているの
きのうは眠れなかったわ
今日もきっと眠れない
恋がやってきて「寝ちゃダメ」って言ったから
魅せられて 悩まされて 戸惑っているの
心を見失ってしまったわ
でもそれがどうしたっていうの?
彼の態度は冷たい 認めるわ
彼は私をあざ笑うかもしれない
だとしても その笑いを愛するわ
毎年春には彼に合わせて歌うの
そしていつか 彼のそばにいられる日がくることを願うわ
魅せられて 悩まされて 戸惑っているのよ
いかがでしょう。
参考になりましたら幸いです。
/// Words by Lorentz Hart ///
★こちらの記事もどうぞ