文学とか美術とか。
なんで難しく感じるのかなあ、とっつきにくいのかなあ、と思う。
私の場合、原因のひとつは「正解を求めてしまう」ところにありそうだ。
「正しい読み方」、「正しい見方」があって、それを外してはならない、みたいな。
正解からズレたことを言ったり書いたりするとバカにされそうな気がするのです。
俳句もそう。
知識とセンスの塊のような特殊な人々が集う場所、みたいな気がして。
ものすごく魅力的な世界の匂いがするけれど、「オマエなんかが来る場所じゃない」と拒絶されそう。
でも、この本はそんな尻込み気分を吹っ飛ばしてくれた。
「はじめに」の部分を読んだだけで、目の前が開けたような気分。
著者は自分の句を紹介した上でこう言う。
【俳句とは記憶の抽斗(ひきだし)を開ける鍵のようなものだ。読者がそれぞれの抽斗を開けてそこに見出すものは同じではない。俳句が引き出す情景は作者が頭に思い浮かべていた情景に限定されない。読者それぞれの抽斗が引かれればそれでよいのだ。】
そうか、そうなのか!
作者自身がそう言ってるんだから、本当にそれでいいんだ!!
・・・こうやって一気にハードルを下げてくれて本編へ。
いろいろな場面ごとにまとまっている。
1 飯を作る
2 会社で働く
3 妻に会う
・・・といった具合。
著者はサラリーマンでもあり単身赴任中。
自炊をしていて、その中で自身の俳句が生まれる様子を見せてくれるのが「1 飯を作る」。
日常からの地続きの話だから難しくなくて、楽しく読める。
その楽しい気分のまま話は発展して、このジャンルの他の作者の句をいろいろと紹介してくれる。
そして、いつの間にか俳句の歴史も知ることになる。
読ませ上手だと思う。
そんな感じで乗せられて、他のジャンルの話もどんどん読み進むことになる。
読み終わると、俳句の世界がすっかり怖くなくなってる。
もっといろいろ知りたいな、と思うようになっている。
さすがに自分で作ってみようか、とまではいかないけど(笑)
少しでも俳句に興味がある方の「1冊め」として最適だと思います。